「土用」とは季節の変わり目の約18日間
「土用」は本来、夏に限らず、立春・立夏・立秋・立冬の直前に訪れる、年4回ある季節の変わり目の期間を指し、いずれも約18日間で、体調を崩しやすい時期とも言われています。2025年の「夏の土用」は7月19日(土)と7月31日(木)の2回が「土用の丑の日」にあたります。
いまや日本の夏の風物詩として広く親しまれているうなぎが、2024年「今年の一皿®」に選ばれました。今回は、うなぎ屋さん応援サイト「うなぎ大好きドットコム」代表の高城 久 氏に、なぜ今うなぎが改めて注目されているのか、その背景や現状、今後の可能性、そして飲食店ならではのアプローチについて、詳しくお話を伺いました。
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うなぎ大好きドットコム
目次
飲食店ならではの、うなぎのススメ
「供給の現状」「持続可能性」「消費者意識の変化」
定番にとらわれない、進化系うなぎ料理の実例
・うなぎ料理専門店、日本料理店の6事例
・専門店以外の3事例
うなぎの今後の広がりと可能性
飲食店へのメッセージ
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飲食店ならではの、うなぎのススメ
――なぜ今、改めてうなぎが注目されているのでしょうか。
食の多様化が進む中で、日本の伝統食材や郷土料理が見直されています。特に「スタミナ食」としてのうなぎは、健康志向の高まりと合致し、再び注目を集めているのでしょう。ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたことでその希少性が話題になり、「今のうちに食べておきたい」という層が一定数いることも見逃せません。
また、職人の技や新しい調理法によって、うなぎがうな重だけでなく、さまざまなジャンルでアレンジされ、メディアやSNSでも頻繁に取り上げられています。さらに、インバウンド需要の回復も大きな要因です。以前は東アジア人が中心でしたが、現在は欧米人にも寿司、天ぷらと並ぶ日本食として浸透しつつあります。
「供給の現状」「持続可能性」「消費者意識の変化」
――まず、現在のうなぎを取り巻く状況について教えてください。
うなぎ業界は現在、供給と持続可能性のバランスを模索している状況です。
まず供給の現状をお話しすると、うなぎ業界では近年シラスウナギの漁獲量が不安定で、供給体制に大きな影響を与えてきました。特に昨季までの数年は記録的な不漁が続き、価格も高騰。しかし、2024〜2025年の漁期は近年まれにみる豊漁となり、一部では1kgあたり200万円超から20万円前後へと価格が大幅に下落したとの報道もあります。
ただし、ハウス養殖にかかる燃料費や飼料代などは依然として高く、新子鰻の価格が実際に下がるかは依然として不透明です。こうした背景から、夏場のうなぎ商品の価格設定には慎重な対応が求められています。
そしてうなぎ業界は現在、供給とともに持続可能性の確保が大きな課題となっています。近畿大学や水産研究・教育機構では、人工孵化から成魚までの完全養殖の研究が進行中で、商業化にはコスト面の課題が残るものの、すでに流通を見据えた段階に入りつつある点は明るい材料です。
また、地域ブランド化の動きも見られ、浜名湖では脂のりのよい「メス化ウナギ」(※)を活かしたブランド開発が進行中。研究と地域資源を組み合わせた新たな価値創出が期待されています。
※メス化ウナギ:養殖ウナギをメス化する技術を開発。メスはオスよりも大きく育ち、身が柔らかいという特徴がある
消費者意識も変化しており、うなぎは「高級」や「ごちそう」から、「希少で価値あるもの」として認識され、季節を問わず食べたいという声も増えています。一方若年層の間では、若手職人によるSNS活用(Instagram・TikTokなど)によって、若年層の集客に成功する事例も登場しています。
さらに、インバウンド需要も増加しています。訪日外国人観光客にとってうなぎは「日本らしい高級料理」として注目の的。調理法や見た目に驚きつつも、好意的な反応が多く、今後の需要拡大が期待されています。
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定番にとらわれない、進化系うなぎ料理の実例
――うなぎはアレンジが難しそうですが、独自性のある一品を打ち出している飲食店はあるのでしょうか。
うなぎといえば、やはり「うな重」という完成された定番メニューが真っ先に浮かびます。あまりに完成度が高く、“理想形”として定着しているからこそ、アレンジの余地は少ないと思われがちです。
しかし近年では、この定番にとらわれず、独自の調理法や提供スタイルでうなぎを再解釈するうなぎ料理専門店、日本料理店も登場しています。そうした挑戦には、うなぎの新たな可能性と、他店との差別化につながるヒントが詰まっています。具体的に、飲食店の事例をご紹介しましょう。
滋賀県大津市大谷町23-15
うなぎ+だし巻きを組み合わせた「きんし丼」。SNSで見かけるようになった、うなぎの上にだし巻きをのせたスタイルの「きんし丼」発祥の店として知られています。
東京都港区麻布十番2-5-11 2F
コース料理の先付として提供される「うなぎバーガー」がユニークです。また、フォアグラのソテーをのせた「うなぎの赤ワイン煮込み」も絶品。ワインで煮込むとうなぎの脂が落ちるので、フォワグラの脂との相性が良いそうです。
埼玉県北葛飾郡松伏町金杉1511
SNS映えする「金のうな丼」や、国産備長炭火蒲焼とA5国産黒毛和牛ローストビーフ、ウニを組み合わせた「雲丹をのせたうな牛」など秀逸なメニューがあります。
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埼玉県吉川市木売2-9-7
カリっと香ばしい「うなぎのタタキ」(写真左)はたっぷりの薬味とポン酢で。創作料理を作る際に引いたうなぎの皮を調理した「皮焼き串」(同右)やぶつ切りを刺して焼く「ガマの穂焼き」(同上)など、珍しい一品料理が豊富です。
大阪府大阪市中央区高麗橋2丁目5−2
冬季限定で提供される「うなぎ鍋」は、蒲焼を使った見た目にも味にもインパクトのある一品。うなぎの蒲焼に、うま味たっぷりの出汁と季節の野菜を合わせた絶妙な組み合わせが好評です。
東京都港区六本木3-8-12 六本木JTビル1F
店主の三宅氏は農林水産省任命・日本食普及の親善大使で、スペシャリテは地焼きのうなぎ。「うなぎの棒鮨」は、職人技が冴える味わいはもちろん、器の色彩やあしらいも美しく、一皿全体で華やかさを演出しています。
加えて、近年では居酒屋やバルといった専門店以外の業態でも、うなぎを使った料理を目にする機会が増えてきました。例えば、うなぎをトッピングに使った「タパス」や「点心」、うなぎ入りの「キッシュ」「パスタ」「チャーハン」「ユッケジャン」など、幅広いアレンジで独自性を打ち出した魅力的な一品に仕上げられています。
東京都港区虎ノ門二丁目6番3号 虎ノ門ヒルズステーションタワー4階
味わいが多層的で上品な串「うなぎの白焼と花びら茸と湯葉の串揚げ」
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東京都港区新橋2-9-13
フレンチの名店出身のシェフが考案した「本物のうなぎパイ」
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東京都新宿区新宿3丁目6-9 山口ビル1F
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うなぎの今後の広がりと可能性
――今後の広がり、可能性についてはどう分析されていますか。
新たなターゲットとしては、訪日外国人とZ世代、そして海外市場が挙げられます。
訪日客にとってうなぎは「いかにも日本らしい高級魚」として今注目が高まっている料理の一つ。Z世代など若年層には、「映える」「珍しい」「贅沢感」といった要素が支持され、SNSでも話題を集めています。
また冷凍技術の進化により、自家製蒲焼の通販「お取り寄せうなぎ」も広がっており、今後は冷凍うなぎのD2C(Direct to Consumer)や海外向け需要の伸長が期待されます。特に東南アジア原産のビカーラ種は、ニホンウナギの代替として注目され、養殖や流通体制の整備が進行中。味や食感の再現性も高く、EC販路や土産品としての活用が進んでいます。
飲食店へのメッセージ
――最後に、飲食店の皆さんへメッセージをお願いします。
うなぎは、祝いや季節の節目に食されてきた、日本人の心に根ざす特別な食材です。その歴史は新石器時代にまで遡り、江戸時代中期に始まった「うなぎの蒲焼」は、数多くの職人や関係者の手によって今日まで受け継がれてきました。
しかし今、資源の減少や職人不足などにより、その未来は大きな岐路に立たされています。だからこそ、「おいしさ」と「持続可能性」を両立させながら、次代へと受け継いでいくことが、私たちの世代に求められています。
うなぎは、集客のフックとなるだけでなく、日本の食文化を未来へつなぐ力にもなります。あなたの一皿が、うなぎ文化の未来を守り、そして広げていく――。飲食店の皆さんこそが、そのバトンをつなぐ主役です。これからの一皿に、大いに期待しています。
取材協力:うなぎ大好きドットコム 代表・高城 久氏
公式サイト
https://unagi-daisuki.com/
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