福岡「Yorgo」のシャキシャキ「ウニとじゃがいも」は常連が迷わず注文するスペシャリテ!

店名を聞けば、自然に思い浮かぶ料理があります。2014年、移転前の「Yorgo(ヨルゴ)」に通い始めた頃、イモ類のホクホクした食感が苦手だった私に衝撃を与えたのが「ウニとじゃがいも」でした。シャキシャキのジャガイモに濃厚なウニのソース。10年以上を経た今も店の名刺代わりであり続ける、この料理をご紹介します。

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ウニとじゃがいも

「ウニとじゃがいも」(1,670円)

フレンチやイタリアンといった枠にとらわれず、ワインとともに自由な料理を楽しめる「Yorgo」。仕入れや季節に応じて変わる手書きのメニューには、旬の魚や野菜、果物を使った料理が並びます。その中で、2014年の開業初日から変わらず載っているのが「ウニとじゃがいも」。マッチ棒ほどの太さに切ったジャガイモと濃厚なウニのクリームソースは、どのように生まれ、なぜ長く支持されてきたのでしょうか。

今回は、福岡在住のフードライター・寺脇 あゆ子さんが、その誕生の背景とシャキシャキの食感を生む技をひもとき、現在のおすすめ料理とともに紹介します。

寺脇 あゆ子
フードライター。愛媛県松山市生まれ、福岡市育ち。福岡と大阪の出版社で編集・ライティングの経験を積み、独立。現在は福岡を拠点に活動。食を中心に、暮らしや旅など幅広い分野の取材・執筆を行っている。食べること、飲むこと、人の話を聞くことが好き。得意分野は肉と酒。自然派ワインや本格焼酎、クラフトジンなどを嗜む。

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Yorgo(ヨルゴ)(福岡・大名)

【店舗Data】
Yorgo(ヨルゴ)

業態:ビストロ
席数:30席(カウンターのみ)
客単価:7,000~7,500円
客層:20~60代と幅広い。男女比3:7
住  所:福岡県福岡市中央区大名1丁目2-15
アクセス:地下鉄赤坂駅より徒歩7分
営業時間:土曜日16:00〜23:00、日~金曜日17:00〜23:00
定休日 :無し
https://www.instagram.com/yorgo.fukuoka/
https://r.gnavi.co.jp/7gbs125x0000/map/

目次
今日も迷わず選ぶ「ウニとじゃがいも」
手切りと絶妙な火入れが生む軽やかさ
東京時代の記憶が看板料理になるまで
若い感性とともに進化する「Yorgo」のこれから

今日も迷わず選ぶ「ウニとじゃがいも」

福岡市・大名、国体道路沿い。大きな暖簾(のれん)を掲げた「餃子のラスベガス」が目印です。店内に入り、そのまま奥へ進むと、壁に小さく「Yorgo」のロゴ。その横の扉を開ければ、中央のオープンキッチンをコの字形のカウンターが囲む、スタイリッシュな空間が広がります。

  • 2014年6月、地域の常連が集うローカルビストロを掲げて警固に開業。現在は大名に店を構える(写真提供:Yorgo)
  • 切り場、仕上げ、揚げ場の3つの持ち場が連動。スタッフが声を掛け合いながら、一皿を作り上げる(写真提供:Yorgo)

席に着くと、料理人の手元はすぐ目の前。鍋を振る音や立ち上る香りを感じながら、仕入れや季節に応じて内容が毎日変わる手書きのメニューから、その日の料理を選ぶのも、この店の楽しみです。旬の魚や野菜を使った料理にあれこれと目移りしますが、やはり外せないのが「ウニとじゃがいも」(1,670円)。2014年、警固(けご)にあった移転前の店で初めて味わって以来、私にとって「Yorgo」を象徴する料理なんです。

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手切りと絶妙な火入れが生む軽やかさ

「ウニとじゃがいも」(1,670円)。開業当初は「ウニとじゃがいもの温かいサラダ」という名で登場。客が「ウニとじゃがいものやつ」と呼ぶうち、開業1〜2年で現在の名に変わった

ではさっそく、久しぶりの「ウニとじゃがいも」をいただきます。ソースを軽く絡めて口に運ぶと、「そうそう、この食感!」と記憶がよみがえります。ホクホク感はなく、細切りのジャガイモがシャキシャキと。そこへウニのクリームソースの濃厚なコクと甘みが重なります。

「Yorgo」を営む川瀬 一馬さんは、お客様からレシピを尋ねられると、材料から手順まで事細かに教えてしまうそうです。「対面で聞かれると、つい全部話しちゃうんですよ」と川瀬さん。ところが、実際に作ったお客様からは「同じ食感にならない」と言われるのだとか。そこで、この食感の秘密をあらためて聞いてみました。

細く切ったジャガイモを強火で一気に炒め、塩で味を決める。厨房に入ったスタッフが最初に覚える仕事が、この千切りなのだそう

ポイントは、ジャガイモをマッチ棒ほどの太さに手切りし、火の入り方をあえて均一にしないこと。ニンニクを加えた太白ごま油を熱し、強火で炒め、しっかり火が通ったものと、わずかに芯を残したものが入り交じるように仕上げます。細すぎても太すぎても、狙った食感にはならないそうです。詳しく聞くほど、手切りの大変さと火入れの難しさを実感。やっぱりこれは、ここで食べるのがいちばんです。

東京時代の記憶が看板料理になるまで

川瀬さんは、長くフランス料理に携わってきた料理人です。東京から奥様の地元である福岡へ移住し、2014年6月、警固に店を開きました。「ウニとじゃがいも」の原点は、川瀬さんが東京で暮らしていた頃にさかのぼります。渋谷・道玄坂の台湾料理店で出合ったのは、細切りのジャガイモをニンニクや唐辛子、塩で炒めたシンプルな料理。シャキシャキとした食感が強く印象に残ったそうです。

オーナーの川瀬 一馬さん。「最近はスタッフのほとんどが20代。彼らがメニュー開発や新たな働き方にも挑戦できる環境を整えています」と語る

開店準備のかたわら手伝っていたビストロで、常連客から「ワインに合うジャガイモ料理を」と頼まれた川瀬さん。蒸したりゆでたりする時間がなく、東京で食べた料理の記憶を頼りに、ジャガイモを細切りにして炒めました。すると、その常連客は店を訪れるたびに同じ料理を注文するように。この反応から、食感の面白さに手応えを感じたといいます。さらに、ジャガイモをパスタに見立て、ウニのクリームソースを合わせることに。「この組み合わせを思いついた時点で、味の輪郭が見えました」と川瀬さん。試作をせず、開業初日からメニューに載せました。

「Yorgo」と「餃子のラスベガス」の間に設けられたワインセラー。フランスや日本をはじめ、各地のボトルが並ぶ

若い感性とともに進化する「Yorgo」のこれから

一方で、手書きのメニューには、若いスタッフの発想から生まれた新しい料理も並びます。川瀬さんがお題を出し、それをもとにスタッフが考案したのが、今回いただいた2品。

「岩本牛しゃぶしゃぶと焼きナスのエスニック風」(1,780円)。福山の畜産家と家族ぐるみで親交のあるスタッフが、川瀬さんとの縁をつないだことから、仕入れが始まった

「岩本牛しゃぶしゃぶと焼きナスのエスニック風」(1,780円)は、スタッフさんが子どもの頃から家族ぐるみで親交を重ねてきた、広島・福山の畜産家が育てる牛を使用。脂のある部位を薄く切り、ナンプラーを加えた湯でしゃぶしゃぶにし、焼きナスやパクチー、自家製デュカ(※)を合わせます。牛肉の脂の甘みを、軽やかに楽しめる仕立てです。

(※)デュカ:クミンやコリアンダーなどのスパイスとナッツ類、塩を混ぜ合わせて粗く砕いた、中東・エジプト発祥のミックススパイス

店で最も若い23歳の料理人が初めて手がけた「とうもろこしのパンナコッタ」(1,230円)

「とうもろこしのパンナコッタ」(1,230円)は、その時季に最も甘いトウモロコシを使い、芯のゆで汁まで生かして濃厚な味わいを引き出します。バター醤油で炒めた実とポップコーンが、香ばしさと軽やかさを添えます。

以前は川瀬さん1人で行っていたメニューづくりも、今は若いスタッフと一緒に。アイデア出しから試作、レシピづくりまで任せ、考える力を育んでいます。川瀬さんが築いてきた味に、若い感性が重なっていく。その先にどんな料理が生まれるのか、これからも楽しみです。

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