2013/01/15 特集

売上アップや信頼関係構築に貢献!お店のファンを作るテイクアウト(2ページ目)

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店の味を広める最強のアイテムで客単価を押し上げ、売上にも貢献

【大阪・梅田】達屋TAZ-YA 阪急梅田店

ジャスミンプリン ¥336(1個)カラメル付きで4 個1,330円のジャスミンプリンセット。創業以来、ブラッシュアップを重ねてきた自慢のデザートだ

テイクアウトは店の〝伝書鳩〟。まずは店内販促を徹底

「テイクアウトは店の〝伝書鳩〟です」とそのメリットを語るのは、大阪・梅田にある「達屋TAZーYA 阪急梅田店」のオーナー、株式会社KIMIYUGlobal 代表取締役の松本達也氏だ。無農薬野菜や獲れたての魚介を生産者から直接仕入れ、自然のうまみを最大限に引き出す料理を追求している。同店のオリジナルデザート「ジャスミンプリン」は、同じく大阪・梅田にある1号店からの看板メニューで、北海道産の最高級生乳と中国・福建省の高級ジャスミン茶葉を使用し、濃厚なのに後味はさっぱりと仕上げた逸品だ。テイクアウト・店内両方で提供することを想定して開発し、現在では、テイクアウトだけで月に400~600個を販売。客単価を押し上げ、売上にも大きく貢献している。

今でこそ「達屋」の〝顔〟となった「ジャスミンプリン」だが、6年前の販売当初は、もちろん無名。それを今の地位にまで押し上げたのは「徹底した店内販促」だったという。「まず商品に絶対の自信があることが前提です。店のスタッフが本当においしいと思わなくては、お客様に伝わりません」と松本氏。そのうえで、店内に看板を掲げるとともに、来店客に声がけ。「自信作なのでぜひ!」と強力にアピールし、まずはデザートとして食べてもらう。「食べて、おいしいと言ってくださったお客様は、高い確率でテイクアウトもしてくださいます」と松本氏。さらに、お土産にもらった人がファンになり、来店に結びつく例も珍しくないという。

「飲食店のテイクアウトが、小売店で売る商品と違う最大のポイントは、店で味わって、おいしいと思った人がお土産や贈答品として買い求め、『おいしいから食べて』と、まわりの方に勧めてくださること。店の味を店の外でも体験してもらえる、最強の販促アイテムです」と松本氏。まさに〝伝書鳩〟と呼ぶにふさわしい働きをしてくれるのが、飲食店のテイクアウトメニューなのだ。

〝箱もの商売〟のデメリットをテイクアウトの成功で補う

「達屋」のテイクアウトは、客の求めに応じて始まったのではなく、1号店の開業当初から、店の柱として位置付けられていた。松本氏は、飲食店が箱(席数)の規模に制限される業種であることを強く意識。「飲食業をやるには、席数に左右されずに売上を上げる方法がどうしても必要」と考えていた。そうはいっても、冷凍物や市販の加工食品などを使わない同店は、料理の仕込みに手間と時間がかかるため、テイクアウト用の商品のために多くの時間を割くことは不可能だった。そこで行き着いたのが、手作りでも比較的時間をかけずに作ることができ、作り置きが可能で、多くの人に愛されるプリンという商品。他店にはない独自性を出すため、何種類も試作し、ようやく「ジャスミンプリン」の開発に成功。オリジナリティがあり、味もネーミングも、ほかにはないものとなった。

次にこれをテイクアウトの商材として確立させるために、容器を選定。様々な種類を試した末に、持ち運んでも中身が崩れにくく、見た目にも愛らしい瓶に決定した。店内で提供するときも同じ瓶を使用し、コストと手間を節約。一方、店名入りの手提げ袋はオリジナルで制作した。コストはかかるが、持ち帰った手提げ袋を再利用してもらうことで、店への愛着を深めてもらおうという作戦だ。「商品にコストと手間をかけすぎると、店の利益とオペレーションを圧迫し、本末転倒になってしまいます。何にコストをかけ、どこを省くかの見極めが大事」と松本氏。店内でもこの瓶で提供することへの反対意見は少なくなかったが、松本氏は「お客様は案外気にせず、瓶もかわいいと言ってくれますね」と笑顔を見せる。

ほかにも店で使用している自家製出汁しょうゆの「達屋おつくり醤油」や、へしこ(鯖のぬか漬け)をバターに練り込んだ「へしこバター」もテイクアウトでき、店のコンセプトと味をアピールするアイテムとして活躍している。さらに現在、ガトーショコラや野菜ジャムなど新しい商品も開発中。一層の発展を目指している。

店内での提供も同じ瓶で。ほのかなジャスミンの香りとトロトロの食感に、多くのファンがついている
店内の看板で、売りをしっかりアピール。オーダーを促し、テイクアウトや通販が可能なことを印象付ける
自家製「達屋おつくり醤油」と「へしこバター」もテイクアウト可能。店の味を宣伝してくれるアイテム
お持ち帰りできる商品のメニュー表。素材と手作りにこだわる同店らしいラインナップだ
路面店のメリットを活かして、道路側にショーケースを設置。店のアイキャッチとしても活躍している
株式会社KIMIYU Global
代表取締
松本達也氏商社マンから飲食業に転身し、1号店を2006 年1月にオープン。無農薬栽培の農家との出会いがきっかけで、素材が持つ本来のおいしさに目覚め、生産者とタッグを組んだ飲食店のあり方を模索している。
達屋TAZ-YA 阪急梅田店
大阪府大阪市北区芝田1-6-13
http://r.gnavi.co.jp/k811301/大阪・阪急梅田駅の高架下の飲食店街に、2009 年12 月にオープン。旬の食材を農家や漁師から直接仕入れ、化学調味料を使わず、ソースやドレッシングも一から手作りする和食店。食材本来のおいしさを追求している。

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