期待以上のテイクアウト商品が、店のバリューと信頼を高める!
【静岡・浜松】魚料理専門 魚魚一
価値ある商品を、その価値以上に仕上げて提供
魚料理専門店として、客単価8,000円という高級業態を成功させている、浜松の人気店「魚魚一」。同店が力を入れるテイクアウト商品のひとつが、「お食い初め膳」と「祝い膳(大人用)」だ。もともとは、4年ほど前に「お食い初め」(生後100日の祝いの儀式)の宴席として店を利用してもらおうと始めたコースプランだった。習わしにしたがって、赤ちゃん用に鯛のお頭付きの焼物、蛤の吸い物など、縁起ものを漆の器で提供。それに父母、祖父母用の会席料理をセットにして打ち出したところ、手応えがあった。同時に、「自宅でやりたい」とテイクアウトを望む声が複数寄せられ、そのつど料理をアレンジして対応していたが、ニーズの高まりを受けて形式を統一。祝い膳として、店の料理と遜色のないようにするために試行錯誤を重ねたという。
オーナーシェフの仲村健太郎氏は、「テイクアウトで大切なのは、価値ある商品をその価値以上に作り上げて、店のバリューを高めること」と語る。そのために、「味や見た目、内容をしっかりさせるのはもちろん、包材にも気を遣いました」と胸を張る。様々な包材を検討した結果、料理が引き立ち、祝いの席にふさわしい黒塗りの方形箱を採用。大人用の「祝い膳」はあえて、1つの器に詰め込まず、二段の重箱と2つの容器を用意。さらに1人分ずつ風呂敷に包んで特別感を演出した。一方、赤ちゃん用「お食い初め膳」のお吸い物には碗もセットにするなどして、華やかな一式ができあがった。店の味を知る客は「さすがにテイクアウトもおいしい」と再来店につながり、「テイクアウトでこんなにおいしいなら、店にも行ってみたい」と新規客を呼び込むケースも少なくない。「期待以上の商品を提供することで、お客様との信頼関係をより強くすることができています」と手応えは十分だ。口コミでの広がりはもちろん、七五三やひな祭り、端午の節句など、ほかのハレの日需要も掘り起こしている。
ただし、「当店は仕出し屋ではないので、テイクアウトはあくまで店の味を自宅に届けるサービス」(仲村氏)ときっぱり。この姿勢を貫くために、刺身はできるだけ作り置きの時間を短くし、保冷剤などでしっかり保存。さらに店の味が守れない規模の大口の注文は断ることさえある。「目先の売上ばかりを狙って、店の信用を落とすわけにはいきません」(仲村氏)とテイクアウトの位置付けを明確にしている。
オリジナル商品を常に開発。ドギーバッグにもこだわり
開店当初から、客の求めに個別に応じて、テイクアウトを手がけてきた「魚魚一」。商品も多彩で、特に接待用の弁当や「刺身の盛り合わせ」などが人気だ。なかでも、「うなぎの刺身」は他店にはない逸品。浜松ならではの料理を探求した結果、タブーとさえ言われてきたうなぎの生食にあえて挑戦し、安全性を確認。鱧の骨切りを応用したさばき方で、小骨の多いうなぎをよりおいしく味わえる提供方法を編み出した。今ではこれを目指して全国から客が訪れるとともに、テイクアウトの需要も増え続けている。「他店がすでに行っていることを後追いして、価格競争をするつもりはありません。当店でしか食べられないもの、当店しか提供できないサービスを開発することが、店の付加価値につながります」と仲村氏。先に紹介した「お食い初め膳」も商圏内の他店に先んじたサービスだ。
ほかにも、様々なドギーバッグ(食べ切れない料理を持ち帰る容器)をストックし、「魚魚一」らしいこだわりで対応している。宴席を急遽早抜けする客には、透明な簡易プラスチック容器ではなく、しっかりした折詰にコースのまだ出していない料理を素早く調理して見栄えよく盛り合わせ、弁当として楽しめる工夫を凝らす。また、温かいご飯を詰めたときにふたに水滴が付かない包材を探し出すなど、常に前進する努力を怠らない。
「テイクアウトでは、スーパーやコンビニの商品や包材がとても勉強になります。よく見に行ってヒントをもらっています」と語る仲村氏。さらなるブラッシュアップでバリューの拡大を目指す。
仲村健太郎氏浜松市出身。調理師専門学校卒業後、京都や香港の日本料理店などで修業。浜松に帰郷後、高級鮮魚店で魚の知識と文化を学び、目利きを会得する。地元の魚のおいしさと奥深さの発信を目指して独立開業し、現在に至る。
静岡県浜松市中区肴町318-28
ペッシェビル3F
http://r.gnavi.co.jp/n104600/JR浜松駅から徒歩8分、繁華街の一角の肴町通りに、2001年にオープンした魚料理専門店。浜名湖・遠州灘の魚介を使った数々の名物料理が売り。なかでも「うなぎの刺身」は同店が商標を有し、全国からファンが訪れる。