ざ・らくちん室町横丁物件、人材、洗い場 ―。“シェアする”横丁で 集客もアップ
思わずハシゴしたくなる! 大人のためのテーマパーク
2017年4月、京都随一の繁華街・四条烏丸にオープンした「ざ・らくちん 室町横丁」。間口が狭く、奥行きの長い2階建て物件をスタイリッシュにリノベーションし、1階と2階に経営の異なる4店舗が集結して作り上げた“縦型の横丁”だ。入居する4店舗の経営者は、京都市内の同じ飲食店で修業した仲間同士。それぞれが独立した後も「らくちんグループ」として頻繁に勉強会などを行っており、その関係性が今回の横丁プロジェクト発足につながった。
横丁内は、1階の入口側に鮮魚と海鮮炉端焼の「イコール」、その奥にとんこつ鍋と餃子を打ち出す「縁楽」があり、2階にフレンチビストロ「仏男(フレンチマン)Jr.」、立ち飲み焼鳥「角福」と、常連客用VIPルームとして用意した、カラオケ付きの共有スペース、という構造。改装時、1階の屋内に“人工の路地”として2店舗に面する通路を設置しており、この一風変わった造りも横丁感の演出に一役買っている。ビルの入口から通路を通って各店舗へアクセスするレイアウトで、屋内の移動で“らくちん”に各店をはしごできることも売りとなっている。
ビジネス層の行き来が多いエリアのため、当初は会社帰りのサラリーマンなどの来店を想定していたが、現在の客層は20代後半の女性が大半。「意外だったのは、40~50代のお客様はじっくり1つの店に留まって飲まれる傾向があり、若い人たちのほうが各店を回ってはしご酒をされることです。テーマパークで様々なアトラクションを楽しむような感覚なのではないでしょうか」と、ざ・らくちん室町横丁代表の渡辺聡氏は話す。
仕掛け人 Interview 横丁のここがポイント!
ともに修業した仲間で新たな横丁を立ち上げ
「ざ・らくちん室町横丁」は、4つの飲食店が共同で運営している横丁です。各店舗の経営者は、もともと私の兄が経営する、京都・四条烏丸の大衆居酒屋「清水家 錦」で修業していた仲間。会社が多店舗展開をしていく際、店長を任された仲間たちが、その後、店を譲り受けて独立し、それぞれ経営者として運営することに。ただ、独立後も会社の枠組みを越えた「らくちんグループ」として、売上をLINEで報告し合ったり、頻繁に集まって会議をするなど、協力し合ってきたんです。「室町横丁」を企画したきっかけは、そのグループ内に新店舗の出店を検討している仲間が数人いたことと、ちょうどその時期に現物件を紹介されたことです。ここは地下鉄四条駅至近の1等地にあり、家賃も高い。個人で借りるのはランニングコストがかさみ、リスクも高くなるので、「ならば仲間でシェアしよう」という考えに至り、4人の経営者でスタートしました。
立ち上げに当たっては、横丁全体の設計や各店の業態、内装などすべてを自分たちで考案。コンセプトを「大人の遊び場」に決め、横丁の各店舗をはしごして、いろいろな楽しみ方ができるように工夫しました。例えば、業態ごとに営業時間をずらしているのもその1つ。仕事帰りや宴会前に軽く1杯飲みたい人のために、立ち飲み焼鳥の「角福」は16時オープン、一次会に利用しやすい炉端焼「イコール」は17時半オープンで、飲んだ後のシメとして鍋やラーメンを楽しめる「縁楽」は18時~26時と少し遅めの営業にしました。また、「仏男(フレンチマン)Jr.」では時間無制限のワイン飲み放題を取り入れ、女性をターゲットにしつつ、幅広いシーンで利用できるようにしています。
別経営でも情報をオープンに。大切なのは信頼関係
運営においては、各店舗の利益よりも、「横丁全体をどう盛り上げていくか」という意識を皆が持っています。各店の状況や売上も毎日報告し合い、問題に早く気付き、解決のアイデアを出し合うようにしています。情報共有の仕組みとして、毎週1回、店長会議も実施しており、スタッフ同士も店の枠を超えてコミュニケーションを取ります。ビル入口で横丁のアピールに大きく貢献しているちょうちんは、この会議でスタッフから出た意見を反映して設置したものです。
各店の店長は、インカムを通して営業時間中にもコンタクトを取れるようにしています。これによって、例えば席の空き状況などもリアルタイムに把握しているので、満席の場合は別の店をお勧めしたり、案内もスムーズにできています。また、忙しい時間帯には、別の店からスタッフがヘルプで入ることも。アルバイトを含め、スタッフには採用時に横丁内すべての店舗で働く可能性があることを伝えており、皆もこれがうちのシステムなのだと受け入れてくれています。2階の2店舗は1つの洗い場を共有していることもあり、「角福」のスタッフが「仏男Jr.」の食器を洗うこともしょっちゅう。こうした“One for All”のやり方は、結果的に各店の集客、売上アップにも直結していると思います。
横丁運営における苦労は特に思い当たりませんが、それはやはり、仲間との信頼関係があるからこそではないでしょうか。お互いに考えをオープンにし、問題点も指摘し合う。そして、変えるべきところをフレキシブルに変える。お客様に喜んでいただけている理由も、そこにあると感じています。