2024年の戦略などについて、注目の経営者に10の質問でインタビュー。2023年を振り返つつ、今後の出店・事業計画や人材・食材高騰といった課題への対応、インバウンド対策・海外事業の展望などについて聞く。
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今回登場する株式会社Mostfunの代表取締役・大崎拓実氏は、1991年生まれの32歳(取材時)。大学時代のアルバイトがきっかけで飲食業に携わり、知人とともに起業。7店舗の飲食店の運営を経験した後、人材系のコンサルタント会社を経て、2020年に株式会社Mostfunを立ち上げた。「飲食業界は人材採用・育成に大きな課題を抱え続けている」と考える彼は、アルバイトから社員への採用を軸とした「カンテラ採用」を掲げ、年間でアルバイト(約250人)のうち8%ほどが社員になるというサイクルを生み出している。「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭ときわ亭」などのFCを軸に店舗を展開してきた彼に、2023年に初の自社開発業態を出店した狙いや、今後の人材採用・育成の取り組みなどについて聞いた。
目次
1.2023年の振り返り
2.2024年の展望(出店・事業計画)
3.人材対策(採用・育成)
4.食材高騰対策(対策内容と成果)
5.インバウンド対策・海外事業
6.DX化に関する取り組み
7.いま注目しているトレンドや業界動き、店舗、業態
8.愛読書
9.趣味・日課にしていること
10.将来、必ず実現したい夢・目標
「カンテラ採用」を軸に、2023年に着手した“やりがいと成長”を、2024年は“文化”にしたい
株式会社Mostfun 代表取締役 大崎拓実 氏
1.2023年の振り返り
「従業員満足度日本一」を理念に掲げ、創業当初から人材教育を軸に事業を拡大してきました。その中で2023年に掲げたテーマは“やりがいと成長”。これまで「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」や「新時代」「もつしげ」などのFCに加盟して出店を続けてきましたが、2023年は自社初のオリジナル業態の開発に踏み切りました。これは、従業員のやりがいと成長を重視してのことです。FCブランドはオペレーションが確立されているので、誰でも即戦力として働けるという利点がある一方、意欲がある優秀なスタッフにとっては自分のアイデアを形にすることが少ないため、物足りなさを感じたり、成長を実感しづらいというデメリットもありました。
まず、オリジナル業態の第1弾として2023年2月に「熟成寿司とおでん すし酒場さんじ 新横浜店」を新横浜駅の近くにオープンしました。物件の営業条件が寿司業態だったため、初めは寿司居酒屋のFCブランドを探したのですが、このエリアのメイン客層であるビジネス層に合うブランドがありませんでした。そこで旧知の仲だった株式会社Pay it Forwardの宮崎元成さんに業態開発を依頼することに。寿司とおでんを売りにし、客単価は3,500円に設定。狙いのビジネス層だけでなく20~50代以上の幅広い層に受け、11月には30坪で月商約1,500万円を記録しました。
また、10月にはそれまで「ときわ亭」として営業していた川崎の店舗を新業態の「もつ焼き じんべえ」にリニューアル。人気焼きとん店とタッグを組んで、もつ焼き以外に牛すじ煮込みやもつ鍋を名物として開発し、サイドメニューも独自に構成しています。客層は30代以上がメインで、客単価は2,800円。40坪で月商約500万円からスタートし、11月は約600万円、12月は約800万円を記録し、順調に売上を伸ばしています。
「じんべえ」の出店場所として川崎を選んだのは、スロースタートで業態を確立させる余裕が欲しかったこと、認められれば売上が上がる商圏であることが理由です。「すし酒場さんじ」は、周囲にオフィス街や大規模なコンサート会場があるという立地もあり、開業してすぐに繁盛店になりました。数字的には成功と言えるかもしれませんが、テコ入れをする余裕がなく、実を言うとサービスのクオリティーに全く満足していません。今は改良中ですが、その反省を生かすために「じんべえ」は、時間をかけて育てられる立地を選んだというわけです。狙い通り、「じんべえ」はすでに業態として完成していて、多店舗展開できる状態にあります。
2.2024年の展望(出店・事業計画)
2月に横浜で1店舗を出店予定です。「じんべえ」立ち上げの際に入社した総料理長が中心となり、初めて完全自社開発のオリジナル業態になります。2024年は、この店を含めて計6店舗の出店を目標にしています。内訳としてはオリジナル業態2店舗、FC2店舗、業務委託2店舗の割合で、初の都内進出も検討しています。
2024年のテーマは、前年から一歩踏み込み、“やりがいと成長を文化にする”。当社は週休3日制を採用していますが、「休みが多くて楽な職場」ということではありません。そもそも1週間の総労働時間は40時間で週休2日制と同じ。飲食業界の問題点の一つはサービス残業が常態化していることですが、その時間をはじめから労働時間に入れ込み、休みを1日増やしただけです。もちろん楽しく働けることが前提ですが、休みが多いぶん、働いている時間もしっかり充実させてほしいと思っています。また、2024年は給与のベースを一律で32,000円アップさせる予定です。
3.人材対策(採用・育成)
当社ではアルバイトからの社員採用を「カンテラ採用」と呼び、注力しています。現在、社員約30人、アルバイト約250人が所属していますが、年間でアルバイトの8%ほど、15~20人がカンテラ採用で社員になっています。この「カンテラ採用」を軸にしたコンサルティング事業も手掛けており、現在25社以上をサポートさせていただいています。また、リファラル採用も多く、2023年は8人を採用。求人広告費はほとんど掛けていません。
加えて、アルムナイ採用(再雇用)にも力を入れており、これまでに2人の再雇用がありました。彼らは飲食以外の業界を一度経験したことで、飲食店で働いているだけでは身につかない社会人としてのスキルを持ち帰って来てくれるので、大きなメリットを感じています。再雇用したうちの1人は、大手ゼネコンを経験してきたのですが、「すし酒場さんじ」のマネージャーとして迎えたところ、売上が月の200万円も上がりました。アルムナイ採用を行うためには、元スタッフとのかかわりを維持することが大切。そのため、これまで勤務していたスタッフ全員のリストを残し、定期的に連絡をしています。
さらに、以前は企業理念の形成のため採用は35歳までと限定していましたが、2023年からは40代以上の採用も始めました。これは創業10年以内に50店舗出店という目標に向けてのこと。
週休3日180時間でやりがいがあり、従業員満足度日本一を目指しているので、ぜひこの記事を読んで興味を持った方は面接に来ていただきたいですね。
4.食材高騰対策(対策内容と成果)
FCブランドはもちろん、「じんべえ」のようにすでに仕入れルートが確立されている飲食企業とのコラボ店舗の場合、食材高騰の影響は少ないです。「すし酒場さんじ」も、そもそも相場より安く提供していたので、高騰分は値上げをしても問題なく人気を維持しています。
5.インバウンド対策・海外事業
インバウンドは意識していません。働き手としては外国人の方の採用も試みましたが、従業員満足度を重視した理念の浸透が難しいと感じました。
6.DX化に関する取り組み
アルバイトの面接からシフト、勤怠、給与、個人情報の管理まで、バックオフィスは徹底してDX化しています。創業メンバーにエンジニアがいるため、POSレジ以外はすべて自社で開発しており、他社への販売も考えています。
7.いま注目しているトレンドや業界動き、店舗、業態
主に関西圏で展開している、イタリアンファミリーレストランの「ピソラ」に注目しています。私がコンサルとしてかかわってもいるのですが、勢いがずば抜けています。ES(従業員満足度)が高く、アルバイトから年間70人も社員になっているんです。これは労働環境が良く、一緒に働きたいと思う上司や仲間がいる、人材が強いという証拠。今は約40店舗ですが、10年以内に300店舗まで拡大すると思います。
8.愛読書
「バカと無知」(橘玲著、新潮社刊)。勝つためには意思決定はトップがすべきということに気付かされ、ミーティングをかなり減らしました。
9.趣味・日課にしていること
仕事一色ですが、従業員やアルバイトと食事会を頻繁にしています。従業員満足度を上げるためには、やはりコミュニケーションを取ることが大切だと思うので。
10.将来、必ず実現したい夢・目標
従業員満足度日本一。そして10年以内に50店舗出店を達成し、社員1,000人を目指します。福祉事業も始める予定で、飲食以外にも人手不足の業界を人気職に変えていきたいです。
■企業情報
会社名: 株式会社Mostfun
設 立: 2022年3月1日
代表者: 代表取締役 大崎 拓実
事業内容: 飲食店経営、システム事業、酒屋事業、コンサルティング、デザイン事業
本社所在地:神奈川県横浜市港北区新横浜1丁目11-4 第一ハマダビル 402号室
https://mostfun.jp/
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