月商1,300万円超「鮨×炭火焼き居酒屋 リリー 渋谷店」の、20~30代女性を呼び込む集客戦略

東京・渋谷の道玄坂にある「鮨×炭火焼き居酒屋 リリー 渋谷店」。認知→興味→行動→評価→口コミという「5段階の消費行動」を基に集客戦略を打ち出し、20代後半の女性をメインターゲットに上質な食シーンを提供して月商1,3000万円を達成している。

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二大看板「原始焼き」「手巻き鮨」と高いホスピタリティーで集客

東京・渋谷駅直結の商業施設「渋谷マークシティ」近くの裏路地に2023年12月オープンした「鮨×炭火焼き居酒屋リリー渋谷店」。「原始焼き」と「鮨」を二大看板に据え、日本酒を軸にクラフトビールや地中海ワイン、果実酒などを取りそろえる。メインターゲットは「28歳の働く女性」。落ち着いてゆっくりと楽しんでもらえる店がコンセプトで、当初から注目を集め、23坪47席で初月に1,000万円超を売り上げた。半年後の2024年7月には1,300万円と絶好調が続いている。

鮨×炭火焼き居酒屋 リリー 渋谷店
東京都渋谷区道玄坂1-14-9 ソシアル道玄坂1F
https://r.gnavi.co.jp/f7fcxrtn0000/
東京・渋谷駅井の頭線西口から道玄坂を登って約3分。駅前の喧騒が嘘のような静かな一画に、2023年12月オープン。23坪47席+テラス6席の和モダンな和食店で、20代後半の女性をメインターゲットに上質な食シーンを提供。平均客単価は5,500円ほど。

目次
5段階の消費行動モデルを基にした店づくり
【POINT1】認知→興味→行動(来店)を促すSNS戦略
【POINT2】二大看板で「評価&口コミ」を獲得!
【POINT3】日本酒を軸にクラフトビールや果実酒をラインアップ
【POINT4】「評価」「口コミ」を促進する“ジャブ100連発”

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5段階の消費行動モデルを基にした店づくり

経営は、日本酒バル「Mr.Happy」(東京・神保町)で2017年に創業したH VIEW株式会社(代表取締役CEO・中田 匠氏)。現在、都内で直営8店舗、FC2店舗を展開するほか、コロナ禍では美容事業やコンサルティング業にも参入。主軸はあくまで飲食業で、直営店はクラフトビール専門店やフレンチレストランなどすべて異なる業態で繁盛を勝ち取っている。

コロナ禍が落ち着き、新規出店を模索していたときに出合ったのが、駅近にもかかわらず人通りが少ない現在の物件。H VIEW取締役CTO(総料理長)の榎本 薫 氏は「ここで何ができるか、何をやりたいかを社長とともに練り上げました」と振り返る。成功の背景には、中田社長が提唱する、
認知→興味→行動→評価→口コミ
という「5段階の消費行動モデル」を踏まえた店づくりがあった。

【H VIEW株式会社 代表取締役CEO・中田 匠氏インタビュー】
https://pro.gnavi.co.jp/magazine/t_res/cat_2/a_3597/

和モダンにまとめた店内は、日々の忙しさを癒やす落ち着いた空間。オープンカウンター17席、テーブル30席のほか、テラス6席がある
  • 通りに面した窓際にハイチェアーの大テーブルを置き、8人前後のグループ利用が可能。外が見える開放感とともに、店内のにぎわいを外に伝えている
  • 初夏にテラス席を設置したところ、予想を上回る人気を博して集客を促進。手前右には「LILY前」と書かれたバス停のオブジェが見える

【POINT1】認知→興味→行動(来店)を促すSNS戦略

主にInstagramを活用して情報を発信。リールも使って雰囲気を伝え、認知の拡大と興味の喚起を図る。フォロワー数は2,500人を突破し、情報拡散と来店促進に貢献している

5段階の消費行動モデルの第一段階が店の認知を上げて興味をもたせること。その戦略の中心に据えたのがSNSだった。主な客層として「28歳の働く女性」に定めたのは「社会人として次のステップに成長しようと考える時期で、食シーンもワンランク上を求めるようになる人が多く、SNSとの親和性も高いから」と榎本氏。思わず撮影したくなるビジュアルのメニューを用意し、上質な料理・空間・接客にこだわり、主にInstagramでリール(ショート動画)も活用しながら発信。狙い通り20~30代の目に止まって話題になるとともに、いつのまにかTikTokでも紹介され、半年足らずでInstagramのフォロワーは2,500人を超えた。

一方、ぐるなびなどのグルメサイトも積極的に活用して、多角的に認知のアップを図っている。

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【POINT2】二大看板で「評価&口コミ」を獲得!

  • 二大看板の1つ「原始焼き」で一番人気の「キンキ」(4,390円)。インパクトを出すために魚を立たせて提供しており、原始焼きならではのおいしさが日本人だけでなく外国人客にも好評。ほかにイワシ、エビ、銀ダラなどを用意
  • もう1つの名物「手巻き鮨」。立体感を出せる手巻き鮨用の器も、写真映えとなるポイント。写真左から「ネギトロ沢庵」(540円)、「魚卵宝石巻き」(870円)、「蟹いくら」(870円)、「甘海老酒盗」(650円)。ほかにも「カニ雲丹」「ネギトロいくら」など十数種類を用意。「マグロ赤身」「真鯛」など定番の握り鮨もある

実際に来店してくれたお客さんに「評価」され、「口コミ」をしてもらうために、二大看板として用意したのが「原始焼き」と「鮨」。「原始焼き」はカウンター前の目立つ場所で調理し、立体感が出るように盛り付けて印象に残るように工夫。もちろん、炭火焼きならではの柔らかくジューシーな仕上がりにも絶対の自信を持つ。人気が高いのはキンキ、イワシ、エビ、銀ダラなど。中でも高価格のキンキは外国人客の注文率が高いという。

炭火の周りに食材を並べ、熱源と食材との距離を調整しながら全体に火を通す「原始焼き」。炭の遠赤外線効果で皮はパリパリ、身はふっくらと仕上がるところが大きな魅力

もう一つの看板料理の「鮨」は、「トレンドであり、お客様の層を問わず人気が高い」(榎本氏)ことが決め手の1つだが、「手巻き鮨」というアイデアを現在の形にしたことで一気に他店との差別化につながった。「もともとは職人でなくても提供できる鮨として開発したのですが、のりの上に具材をのせて、巻かずに提供することで見た目のかわいらしさが演出できました」と榎本氏。出数が多いのは「ネギトロ沢庵」だが、宝石を散りばめたような「魚卵宝石巻き」には歓声が上がるなど、客の心をつかんでいる。

そのほかの一品料理も魅力的だ。かわいらしいビジュアルの「ポテトサラダ」、上品に仕上げた「鰻クリームチーズ春巻き」、シャインマスカットとマスカルポーネチーズを生ハムで巻いた「果実の生ハムチーズ」(限定6食)など、誰かに教えたくなるメニューばかりで、総メニュー数は60点を超えている。

  • 雪だるまのような外観がキュートな「ポテトサラダ」(780円)。マッシュポテトの上に煮卵をのせ、ガーリック&バターのソースをあしらっている。食べるときに混ぜ合わせるのも楽しい一品
  • 「鰻クリームチーズ春巻き」(540円)。中華の定番である春巻きを和風にアレンジ。鰻とクリームチーズに大葉と山椒を合わせ、上品に仕上げている
  • 「う巻き」(1,750円)。女性に人気の卵焼きは、とある老舗から仕入れたもので、ウナギのかば焼きをのせることでボリューム感やインパクトを創出
  • 「果実の生ハムチーズ」(限定6食/870円)。さまざまなフルーツで試食を重ねた結果、味のバランスが絶妙なシャインマスカットにほぼ固定。果実の甘みと塩け強めの生ハムの組み合わせは、酒との相性も抜群

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【POINT3】日本酒を軸にクラフトビールや果実酒をラインアップ

日本酒初心者が多いことから、飲みやすさを重視して常時30種類をラインナップ。左から「あたごのまつ」(グラス120ml/1,320円)、「写楽」(同1,100円)、「十四代」(同2,200円)

ドリンクの軸は、創業以来の蓄積と実績がある日本酒。「当初はさまざまな味わいをそろえましたが、現在は初心者が親しみやすく飲みやすい種類を中心にしています」と榎本氏。根底に「日本酒の奥深さを広め、日本酒人口を増やしたい」という思いがあり、メニューにそれぞれの銘柄情報を掲載してオーダーを促進している。

国内外からさまざまなクラフトビールを仕入れ、定期的に銘柄も入れ替えている。左から「Puffers and Eels」(アメリカ・ロングビーチ)、「Wolf Shirt Wednesday」(同・デンバー)、「Reno As Fuck」(同・スパークス)、いずれも473mlで1,870円

同時に幅広く好みに対応しながら独自性を追求。国内外のクラフトビールや地中海ワイン、甘味が強く飲みやすい果実酒などを取りそろえ、「飲みたいドリンクがある」という安心感にも気を配る。

メニュー表では、日本酒に慣れていない人のために、飲み口や産地、使用米、製造方法などを明記して選びやすいように工夫している

【POINT4】「評価」「口コミ」を促進する“ジャブ100連発”

来店客との距離を縮める接客の仕掛けを「ジャブ100連発」と命名して、実施している。その1つが、できるだけ多くの客と日本酒で乾杯すること。乾杯の回数をカウントする「乾杯ノート」(写真)をつけてスタッフのモチベーションを上げている

メニュー以外でも、来店客の「評価」を押し上げ、「口コミ」につながるような取り組みを実施している。それが、接客時にさまざまなかたちで来店客の満足度を高めたり、お店の印象が残るような取り組みを「ジャブ100連発」と命名して実行している。「客とスタッフが必ずコミュニケーションを取る」というミッションはその1つ。「スタッフと会話をするかしないかで、店の印象は大きく異なります。会話なしにお客様を帰さないことが大切」と榎本氏は強調する。オペレーションのDX化は時代の流れで、「リリー」もオーダーはモバイル。それだけに人にしかできないホスピタリティーをどう発揮するかが、再来店や口コミの決め手になる。

そうは言っても、忙しさのために会話ができないこともある。そこで、スタッフが日本酒を持って客席に行き、小グラスで一緒に乾杯するようにしている。短時間の語らいではあるが、来店のきっかけや料理・日本酒の感想を聞いたりして距離を縮めている。

「ジャブ100連発」の取り組みでは、このほかに店内とトイレのBGMを時間帯によって変える、エントランス横に日本酒セラーを配置する、客に呼ばれる前に動く、器にこだわる、バス停のオブジェを店前に置く、などがあり、誰かに話したくなる要素の詰まった店を追求している。

人材不足の中、人でしかできないホスピタリティーに注力するためにも、デジタル化を推進。モバイルオーダーにすることで、出数などのデータ収集と分析が容易になるメリットもある

こうした取り組みが効果を発揮し、最高月商は1,300万円。来店客の6~7割が女性で、特に20代後半から30代の女性が中心。60代以上の来店も増えており、幅広い年代に愛される店になっている。

10月には新宿に「リリー2号店」が、11月には渋谷の新ランドマーク「Shibuya Sakura Stage」に新業態「鮨 飛鳥(SUSHI HICHO)」がオープンする予定で、今後も成長・発展を加速させていく。

H VIEW株式会社 取締役CTO(総料理長) 榎本 薫 氏
高校卒業後、和食店で5年ほど調理の技術を磨いた後、複数の飲食店で経験を積む。2017年、株式会社H VIEWの1号店立ち上げに参加。以降、総料理長として業態・メニュー開発に奮闘中。

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