二大看板「原始焼き」「手巻き鮨」と高いホスピタリティーで集客
東京・渋谷駅直結の商業施設「渋谷マークシティ」近くの裏路地に2023年12月オープンした「鮨×炭火焼き居酒屋リリー渋谷店」。「原始焼き」と「鮨」を二大看板に据え、日本酒を軸にクラフトビールや地中海ワイン、果実酒などを取りそろえる。メインターゲットは「28歳の働く女性」。落ち着いてゆっくりと楽しんでもらえる店がコンセプトで、当初から注目を集め、23坪47席で初月に1,000万円超を売り上げた。半年後の2024年7月には1,300万円と絶好調が続いている。
東京都渋谷区道玄坂1-14-9 ソシアル道玄坂1F
https://r.gnavi.co.jp/f7fcxrtn0000/
目次
・5段階の消費行動モデルを基にした店づくり
・【POINT1】認知→興味→行動(来店)を促すSNS戦略
・【POINT2】二大看板で「評価&口コミ」を獲得!
・【POINT3】日本酒を軸にクラフトビールや果実酒をラインアップ
・【POINT4】「評価」「口コミ」を促進する“ジャブ100連発”
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5段階の消費行動モデルを基にした店づくり
経営は、日本酒バル「Mr.Happy」(東京・神保町)で2017年に創業したH VIEW株式会社(代表取締役CEO・中田 匠氏)。現在、都内で直営8店舗、FC2店舗を展開するほか、コロナ禍では美容事業やコンサルティング業にも参入。主軸はあくまで飲食業で、直営店はクラフトビール専門店やフレンチレストランなどすべて異なる業態で繁盛を勝ち取っている。
コロナ禍が落ち着き、新規出店を模索していたときに出合ったのが、駅近にもかかわらず人通りが少ない現在の物件。H VIEW取締役CTO(総料理長)の榎本 薫 氏は「ここで何ができるか、何をやりたいかを社長とともに練り上げました」と振り返る。成功の背景には、中田社長が提唱する、
認知→興味→行動→評価→口コミ
という「5段階の消費行動モデル」を踏まえた店づくりがあった。
【H VIEW株式会社 代表取締役CEO・中田 匠氏インタビュー】
https://pro.gnavi.co.jp/magazine/t_res/cat_2/a_3597/
【POINT1】認知→興味→行動(来店)を促すSNS戦略
5段階の消費行動モデルの第一段階が店の認知を上げて興味をもたせること。その戦略の中心に据えたのがSNSだった。主な客層として「28歳の働く女性」に定めたのは「社会人として次のステップに成長しようと考える時期で、食シーンもワンランク上を求めるようになる人が多く、SNSとの親和性も高いから」と榎本氏。思わず撮影したくなるビジュアルのメニューを用意し、上質な料理・空間・接客にこだわり、主にInstagramでリール(ショート動画)も活用しながら発信。狙い通り20~30代の目に止まって話題になるとともに、いつのまにかTikTokでも紹介され、半年足らずでInstagramのフォロワーは2,500人を超えた。
一方、ぐるなびなどのグルメサイトも積極的に活用して、多角的に認知のアップを図っている。
【POINT2】二大看板で「評価&口コミ」を獲得!
実際に来店してくれたお客さんに「評価」され、「口コミ」をしてもらうために、二大看板として用意したのが「原始焼き」と「鮨」。「原始焼き」はカウンター前の目立つ場所で調理し、立体感が出るように盛り付けて印象に残るように工夫。もちろん、炭火焼きならではの柔らかくジューシーな仕上がりにも絶対の自信を持つ。人気が高いのはキンキ、イワシ、エビ、銀ダラなど。中でも高価格のキンキは外国人客の注文率が高いという。
もう一つの看板料理の「鮨」は、「トレンドであり、お客様の層を問わず人気が高い」(榎本氏)ことが決め手の1つだが、「手巻き鮨」というアイデアを現在の形にしたことで一気に他店との差別化につながった。「もともとは職人でなくても提供できる鮨として開発したのですが、のりの上に具材をのせて、巻かずに提供することで見た目のかわいらしさが演出できました」と榎本氏。出数が多いのは「ネギトロ沢庵」だが、宝石を散りばめたような「魚卵宝石巻き」には歓声が上がるなど、客の心をつかんでいる。
そのほかの一品料理も魅力的だ。かわいらしいビジュアルの「ポテトサラダ」、上品に仕上げた「鰻クリームチーズ春巻き」、シャインマスカットとマスカルポーネチーズを生ハムで巻いた「果実の生ハムチーズ」(限定6食)など、誰かに教えたくなるメニューばかりで、総メニュー数は60点を超えている。
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【POINT3】日本酒を軸にクラフトビールや果実酒をラインアップ
ドリンクの軸は、創業以来の蓄積と実績がある日本酒。「当初はさまざまな味わいをそろえましたが、現在は初心者が親しみやすく飲みやすい種類を中心にしています」と榎本氏。根底に「日本酒の奥深さを広め、日本酒人口を増やしたい」という思いがあり、メニューにそれぞれの銘柄情報を掲載してオーダーを促進している。
同時に幅広く好みに対応しながら独自性を追求。国内外のクラフトビールや地中海ワイン、甘味が強く飲みやすい果実酒などを取りそろえ、「飲みたいドリンクがある」という安心感にも気を配る。
【POINT4】「評価」「口コミ」を促進する“ジャブ100連発”
メニュー以外でも、来店客の「評価」を押し上げ、「口コミ」につながるような取り組みを実施している。それが、接客時にさまざまなかたちで来店客の満足度を高めたり、お店の印象が残るような取り組みを「ジャブ100連発」と命名して実行している。「客とスタッフが必ずコミュニケーションを取る」というミッションはその1つ。「スタッフと会話をするかしないかで、店の印象は大きく異なります。会話なしにお客様を帰さないことが大切」と榎本氏は強調する。オペレーションのDX化は時代の流れで、「リリー」もオーダーはモバイル。それだけに人にしかできないホスピタリティーをどう発揮するかが、再来店や口コミの決め手になる。
そうは言っても、忙しさのために会話ができないこともある。そこで、スタッフが日本酒を持って客席に行き、小グラスで一緒に乾杯するようにしている。短時間の語らいではあるが、来店のきっかけや料理・日本酒の感想を聞いたりして距離を縮めている。
「ジャブ100連発」の取り組みでは、このほかに店内とトイレのBGMを時間帯によって変える、エントランス横に日本酒セラーを配置する、客に呼ばれる前に動く、器にこだわる、バス停のオブジェを店前に置く、などがあり、誰かに話したくなる要素の詰まった店を追求している。
こうした取り組みが効果を発揮し、最高月商は1,300万円。来店客の6~7割が女性で、特に20代後半から30代の女性が中心。60代以上の来店も増えており、幅広い年代に愛される店になっている。
10月には新宿に「リリー2号店」が、11月には渋谷の新ランドマーク「Shibuya Sakura Stage」に新業態「鮨 飛鳥(SUSHI HICHO)」がオープンする予定で、今後も成長・発展を加速させていく。
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