2026/07/03 コラボ企画

港区・大門「鶏ポタラーメンTHANK」“無理しない経営”で店舗を増やす戦略とは

「鶏ポタラーメン THANK(サンク)」1号店は、東京港区・大門の裏通りに店を構える。のれんを掲げず、カフェのような佇まいで、ラーメン店にありがちな重さや強さとは距離を置いた存在だ。軽やかで優しい一杯は、他店が取りこぼす客層を捉え、着実に店を増やしてきた。その背景にあるのは、感覚ではない設計と、無理をしない判断だ。

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※スマイラー122号(2026年5月)より転載

“ヘルシー”と言わない。“満足”をつくる設計

この店のスープは野菜がふんだんに使われている。「ヘルシーを全面に出し過ぎると、やっぱ敬遠されがちになっちゃうじゃないですか。物足りないんじゃないかとか。なので、お客様たちが食べ終わった後に、なんか結構、カラダにいいもん食べたなとか、罪悪感がなかったっていう風にクチコミで発信してくれるような感じがいいなと思って、健康になるラーメンって風には謳(うた)わずに“10種類の野菜が入っている”という、ヘルシー感をイメージしてもらっています」とTHANK合同会社の田邉 雄二代表は語る。

看板商品の『ぽてりラーメン』の塩卵付き

定番のラーメンの麺量は125グラム。ミニサイズもあるが、そちらは子どもや、呑みの“締め”に求める客が大半だ。「博多の豚骨ラーメンって一杯の麺の量がそこまで多くない。食べ終わった後に替え玉があって、そこで味変したりする。うちも同じ細麺を採用して、カレースパイスやピクルスを置いて、味変を楽しみながら自分のお腹の具合にあわせてもらっています」。

スープにライスをひたしてリゾット風に。こちらは小サイズ。卵黄とチーズをトッピング

麺を食べ終えた後にライスを自分の食べたい量に合わせて注文し、スープに浸してリゾット風に食べるのが定番。ライスは「三口ぐらい」の“豆サイズ”80円からある。卵黄やチーズのトッピングも別途注文が可能。つけ麺など他の商品は中太麺で、量は200グラムから400グラムまで。どの商品も客側で満足度の調整ができる設計だ。

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同じ看板で、違う店になる

THANK合同会社の田邉 雄二 代表

また同店では「こんにゃく麺」も選べる。これが、他店で逃しているかもしれない客層を拾えている。「これがあるだけで、『グループにひとり(麺が)食べられないんだよね、でもあそこならこんにゃく麺があるから』って来ていただけたりします」と田邉氏。

小麦は避けたいがスープは飲みたい人や、グルテンフリー志向のインバウンド客の注文が多い。スープが鶏ベースなのは田邉氏の米国留学経験に由来する。「休みに友達を呼んで豚骨ラーメンを作って食べてもらっていたら、仲良かったイスラム系のモロッコ人が『俺は豚食べられない』って。それで彼が食べられる鶏のラーメンを作るようになったんです。今はイスラム系のインドネシア人などが食べに来てくれたりしています」。

「野菜は10種類入れているんですけど、ジャガイモが多すぎると重くなる。そこで、ダイコンと長ネギをたくさん入れているので、ふわふわした食感なんです。軽さがある“ポタージュラーメン”って感じで売ってますね」。

鎌倉店以外、昼はOLと会社員がターゲット。お茶の水店は学生客、蒲田店は夜に地元民が増える。カウンター席のみの鎌倉店はメニューを絞り、訪日外国人客(インバウンド)の注文が多いため、ワインも提供している。客単価は約1,400円から1,550円。「普通のラーメンで、リゾットまで食べるセットだと1,150円ぐらいから食べられる設計にはしてあります。ですが最近の物価高が本当に激しいので、味のブラッシュアップもやりながら昨年の10月に一気に客単価を150円から200円弱上がる設計で価格改定しました」と田邉氏。

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撤退の判断。雇用を守る出店

2020年、新商品の「チリトマラーメン」でラーメンTRY大賞トレンド部門を受賞。同年に受賞商品の新業態で出店したが、くしくもコロナ禍が同時期に勃発。3年で閉店することに。「まぁ『鶏ポタ』のセカンドブランドということでいろんな意味でいけるかなと。『チリトマラーメン』のコンセプトにはが“アスリートでも罪悪感なく食べられるラーメン”という裏のテーマがあったんです。売上も初め良かったんですけど、オープンの2カ月後ぐらいに緊急事態宣言が始まって。そこから徐々に売上が萎んできて…」。

新店は大門の表通りにあった。当時の家賃は「ここより倍ぐらい高い」50万円。「やっぱり固定費が高過ぎたので、これは早めの方向転換しないと取り返しのつかないことになると思って。3年後には一旦辞めました」と田邉氏。

その後、続けて鶏ポタ3号店となる蒲田店を出店。「そこで雇ってた子たちが働く場所がなくなるっていうのもあって、蒲田の物件を見つけたんですよね」。

ブランドの一本化で、味・店・人をそろえる

「でもセカンドブランドをやることで、やっぱり1本にした方が楽だなって。ある程度規模が大きくなるまでは『鶏ポタラーメンTHANK』1本を極めていきたいって、今はクリアに見えています」と田邉氏。

さらに2026年も、もう1店舗増やしたいと田邉氏は語る。「ただ自分たちが大事にしているのは、店舗数を求めるというより、ちゃんと人が育って見込みができたときに店舗を広げていくようにしたい。なので、爆発的な成長というより、緩やかな曲線でいきたいなと思ってます」。

概(がい)して、店の原価率は30%、人件費率平均30%、家賃比率2%だ。「FL60でコントロールしています。70とかいくともう利益が絶対に残らないんです。うちが大事にしてるのは“総合力”ですね。すごく大事だなと思っています。商品は優しい味わいなので、接客もやはり優しい接客で、声のトーンも柔らかく、とか。『ヘイらっしゃい!』とか、そういうのはやめようって(笑)。『いらっしゃいませ』、『ありがとうございます』、という風に統一感は大事にしています」。

英語が堪能な田邉氏だが、海外進出は未定だ。関東圏外の進出についても、全国のラーメンフェスタに出店し、現在は検証中だと話す。

緩やかな雰囲気をまとう経営者がつくりだす店のブランド。優しさは設計できる。そのかたちは今も静かに更新されている。

文:高山 浩子
株式会社テンポスホールディングス 広報課所属。月刊飲食業界誌「スマイラー」の特集記事、飲食店レポートの編集・取材・執筆を主に担当。店舗運営のヒントが隠れた「面白い読み物」を届けたく、日々励んでいます。食べ盛り男子2人の母。趣味はこだわりカレー店巡り。
THANK 合同会社
住所:東京都目黒区大岡山1-27-14 アルカディアハイム3F

鶏ポタラーメン THANK 大門店
住所:東京都港区芝大門2-1-13 芝大友ビル1F
https://r.gnavi.co.jp/ay46095y0000/

■飲食業界誌「スマイラー」

“飲食店の笑顔を届ける”をコンセプトに、人物取材を通して飲食店運営の魅力を発信。全国の繁盛店の紹介から、最新の販促情報、旬な食材情報まで、様々な情報を届けている。毎月15,000部発行。飲食店の開業支援を行う「 テンポスバスターズ 」にて配布中!

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