2019/01/15 特集

正しく扱えば、もっとおいしい&売りになる。ジビエ再考(7ページ目)

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ジビエ料理の人気店2 高級なイメージのあるジビエを、日本酒に合う居酒屋メニューに!

【東京・大手町】ルンゴ

【炭火焼・いのしし(950円)】秋に獲れた佐賀県産のイノシシを、塩・コショウでシンプルに味付けし、炭火で焼いた一品。付け合わせに酸味と甘みのあるガリを添えて提供する

系列のイタリアンで培った経験と仕入れルートを活用

 地下鉄大手町駅に直結するビルの地下飲食街「よいまち」。2017年2月、そのオープンと同時に出店した「ルンゴ」は、佐賀県の地酒とジビエ料理を売りにする居酒屋だ。フランス料理やイタリア料理でポピュラーなジビエを、あえて居酒屋で取り入れた経緯について、料理長の立石祐也氏は、「系列のイタリア料理店でジビエを提供してきた関係で、以前から仕入れルートや調理のノウハウを持っていたんです。そこで、もっと気軽にジビエを楽しんでいただきたいという想いで、居酒屋メニューの開発にチャレンジしました」と語る。

  • グランドメニュー。鮮魚や鶏肉、野菜を使った酒肴が多く、ジビエメニューは2割ほど
  • 日替わりのおすすめメニューも用意。クマなどのめずらしいジビエ料理が加わることも

 通年でジビエを前面に打ち出す一方で、鮮魚の刺身やおばんざいなども豊富にそろえ、ジビエメニューの数は全体の2割程度にとどめる。親しみやすい料理の中にジビエメニューを加えることで、幅広い層の来店を促しつつ、オリジナリティを高めたいという狙いからだ。

 使用するジビエは、北海道や奈良県産のシカ、佐賀県産のイノシシ、宮崎県産のキジが中心。これに、季節と仕入れ状況によってウズラ、ハト、カモなどの鳥類や、ウサギなどが加わる。仕入れ先は、ジビエの卸売業者のほか、食肉処理施設を持ったハンターと直接取引をするケースも。事前に産地や食肉処理施設へ出向き、処理方法や味などを確認し、信頼できると判断したハンター、業者とだけ取引するようにしている。「狩猟に携わる人たちと関係ができ、こまめに連絡を取り合っていると、クマやアナグマなど、あまり出回らないジビエも仕入れられます」と立石氏。

同じイノシシでも、季節によって肉質が異なる。動物の種類や雌雄によっても違うため、その都度状態を見極め、できるだけゆっくりと火を通す

 ジビエを使ったメニューの一番人気は、「炭火焼」(950円~)。1cmほどの厚さにスライスしたイノシシ、シカ、キジなどを、炭火でじっくり焼き上げるシンプルな調理法で、特にイノシシのオーダーが多い。季節によって脂の付き具合などが違うため、肉によって味付けを調整。「冬場のイノシシは、脂がよくのって食感も柔らかいため、塩・コショウで下味を付け、山椒を添える程度。一方で夏は赤身が多いため、シェリー酒を発酵させた、香り豊かなシェリービネガーで味付けして、赤身のさっぱりした味わいを際立たせています」(立石氏)。赤身が主体のシカは味噌漬けにして焼く、スネ肉など硬い部位は煮込み料理にするなど、動物の種類や部位によっても工夫を凝らす。いずれも、もう1つの売りである佐賀の日本酒に合うよう、優しい味わいを心がけている。

【しし豆腐(842円)】佐賀県産の豆腐を数種の出汁としょうゆで煮込み、イノシシのバラ肉を合わせる。名物の1つで、ジビエ初心者にも好評
【ポテトサラダ(518円)】ポテトサラダに、佐賀県のハム工房で作られているイノシシのジャーキーをトッピング。イノシシの味がアクセントになり、日本酒に合うと好評
【ばりばりピーマン自家製じびえ肉味噌マヨ(518円)】独自の方法で甘みを引き出したピーマンに、ジビエの挽肉を豆板醤やみりんなどで味付けした自家製肉味噌を添えて提供。ピーマンに肉味噌をのせて食べる。ジビエは日によって異なる

 客層は近隣に勤めるビジネス層が中心で、ジビエを目的に来店する人や、普通の居酒屋感覚で来店する人など、動機は様々。ジビエを食べたことがない人も多いため、接客の際には、「シカは高タンパク、低脂肪で食べやすい」「キジは桃太郎に出てくる鳥」など、味やビジュアルをイメージしやすいよう紹介。ときには、食材を客席へ持って行き、産地や処理方法なども伝えてオーダーにつなげている。「当店で初めてジビエを食べて、ファンになってくれるお客様も多いです」と、立石氏は手応えを感じている。

ルンゴ
東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルB1
https://r.gnavi.co.jp/d9snzh6j0000/
和モダンな内装の店内。間口16m、奥行4mという横長の空間は、カウンター席が主体。表の立ち飲みスペースのほか、半地下に小さな座敷もある。
料理長 立石 祐也氏
佐賀県出身。2012年に経営母体の株式会社ダルマプロダクション入社し、イタリア料理店で腕を振るう。オープニングスタッフとして「ルンゴ」に入店し、現在は料理長として仕入れや調理を担う。

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