2020/04/14 特集

今、飲食店がやれることーー経験したことのない経営の危機を乗り越えるために(2ページ目)

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【赤字の最小化】“売れない現実”を前提にして、固定費と人件費を圧縮する

最低人員で運営し、損益分岐点を下げる

 売上減少による打撃を最小化するために、「最初に行うべきは、固定費の削減」と二杉氏は訴える。「今までは売るための店づくりを進めてきたが、今は売れない現実を前提に、できる限りコストを圧縮しなければならない」と指摘。実際、赤字が日々膨らんでいる店が多くあり、この“出血”を“止血”することに、まずは着手したい。

 少しでも削減したい固定費で代表的なのは家賃。しかし、これは貸主の意向が大きく、簡単には削減できないが、「交渉の余地があるならチャレンジしてみるとよいでしょう。事実、商業施設ではテナント料の値下げ交渉が始まっているところもある」と二杉氏は語る。さらに、人件費も削減の対象。パートやアルバイトスタッフの人件費は変動費に分類されることもあるが、飲食店の場合は必ず一定の人員が必要なことから、固定費的要素が強い。二杉氏は「まず、営業時は最低人員に抑え、損益分岐点を下げることが先決」と訴える。現在、客数の減少や営業時間の短縮、自粛要請による休業で、人員が明らかに余剰になっている店も多いだろう。社員を含め、パートやアルバイトスタッフの稼働時間を減らし、人件費を圧縮して売上に見合う規模に近づけることは不可避。赤字をできる限り少なくすることが、目下の重大事案だからだ。しかし、今まで人員不足に悩んできた店も多く、大事に育ててきたスタッフもいるはず。この状況下だからといって、「勤務時間を減らしてほしい」と伝えたり、ましてや手放すことはできるだけしたくない。また、事態収束後の営業のために、なるべく人材は確保しておく必要がある。

 そういったときに活用できるのが、厚生労働省の助成金の1つ「雇用調整助成金」(次ページ最下部の記事を参照)。経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されるもの。今回の新型コロナウイルス感染症による「雇用調整助成金」は、特例措置が取られており、正規労働者だけでなく、パートやアルバイトなど非正規労働者にも適用されるとともに、助成率も拡大され、中小企業が5分の4、大企業では3分の2、さらに解雇等を行わない場合は中小企業は10分の9、大企業は4分の3が適用されるので、ぜひ活用したい。

 そのほか、変動費である食材費は、予想される客数に合わせて最適化することは言うまでもない。また、この機会に、経費全般や店の状況を見直して、効率のよい店舗運営を目指す視点も、決して無駄にはならないはずだ。

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