2020/04/14 特集

今、飲食店がやれることーー経験したことのない経営の危機を乗り越えるために(3ページ目)

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【資金繰り】政府の「資金繰り支援」を活用。長期化に備え月商6カ月分の資金を確保

経済産業省などのHPで支援策の最新情報を確認

 安倍首相は3月28日、新型コロナウイルスとの戦いについて「長期戦を覚悟してほしい」と国民に呼びかけた。逆風の長期化に備えて、二杉氏は「手元にキャッシュを多めに用意すること」をすすめる。それには、まず政府系の資金繰りを支援する融資制度を、躊躇なく利用することが大切だ。

 小規模な飲食店の中には、先が見えない状況下で新たな融資を受けることを不安視する向きもある。融資といえど、借り入れであることに変わりはないと考えるのも当然だ。しかし、二杉氏は「政府系の資金繰り支援は、制度を併用すれば実質的に無利子、元本返済は数年後です。資金ショートの心配を抱えるより、安心して運営できる体制を整えることが、まずは大事です」とアドバイスする。元本返済が始まるまでに事態が収束せず、返済ができない状態になったとしても「そのときは、日本経済全体が同じ状況ですから、別のルールができる可能性が高い」と二杉氏。今は一時的な苦難であり、それを乗り越える武器として、融資を受けるのは決してリスキーな選択ではないだろう。

 では、どのくらいの規模の融資が適切なのだろうか。二杉氏は「ダメージが少ないエリアは月商3カ月分程度、ダメージが大きいエリアは長期化も想定し、6カ月分を準備したい」と語る。融資を受けるにあたっては、当然、審査を受けることになるが、今は“国難”という位置付け。「よほどの事情がないかぎり、月商3カ月分の融資はほぼ認められると思います」(二杉氏)。例えば、前年同月の月商が1000万円の店の場合、3000万円の融資を受けられれば、仮に月々200万円の赤字を出したとしても、15カ月間は資金ショートを避けられる。月々の赤字を概算して融資額を決めれば、運転資金がいつまでもつのか明確になり、先々の計画も立てやすくなるだろう。

 政府の資金繰り支援の情報は、経済産業省ホームページ「新型コロナウイルス感染症関連」に掲載されている。ここには、中小事業者への支援として「最長で5年間、元本の返済不要」「金利負担が実質ゼロ」「担保なしで借り入れ可能」と書かれており、すでに債務がある事業者も利用できる制度であることも明記されている。また、飲食店を含めた「生活衛生関係営業者」に向けた特別貸付も実施。さらには3月28日、政府は「緊急経済対策」として、中小企業・小規模事業者などに対し、「民間による無利子の融資」「新たな給付金制度」の実施を表明している。こうした新たな政策や情報も随時チェックしたい。もちろん、店の税務処理を依頼している税理士に財務状況を相談して、今後の資金繰りについて検討することも有効だ。

 そのほか、前項で触れた「雇用調整助成金」や経済産業省の「IT導入補助金」といった支援策を「この機会に検討してみるとよいのでは」と二杉氏。これは、「バックオフィス業務の効率化などの付加価値向上につながるITツール導入を支援」するもの。在宅勤務が推奨されるなか、飲食企業でも業務改善の一環として活用できる可能性がある。一方、即効性のある支援にはなりにくいが、インターネット経由で資金を集める「クラウドファンディング」でも、サービス利用料の免除などの動きが始まっている。

国や政府金融機関が資金繰り支援を実施。新型コロナウイルス感染症に伴う飲食店への行政支援制度

 国や政府金融機関などでは、新型コロナウイルス感染症に伴う資金繰りの支援を行っている。ここでは、営業短縮や休業によるスタッフの休業手当や賃金などの一部を助成する「雇用調整助成金(特例)」と、中小企業・小規模事業者向けの「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を紹介(すべて3月末日時点の情報)。

 ほかにも、自然災害など突発的な障害が発生し、経営が困難となった中小企業向けの資金繰り支援制度「セーフティネット保証(4号、5号)」が経済産業省から発動されている。本店や事務所の所在地の市区町村へ申請し、その認証を取得すれば、中小企業や小規模事業者でも金融機関から借り入れがしやすくなるので、まずは経済産業省のホームページをご確認いただきたい。

 「ぐるなびPRO」でも「新型コロナウイルス感染症に伴う飲食店様への行政支援制度」を案内しているので、こちらもご参照を。

従業員の休業手当に関する支援制度「雇用調整助成金(特例)」

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するもの。現在、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、特例措置のさらなる拡大が実施されている。

【対象】
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、最近1カ月の生産指標(売上、客数などの事業活動を示す指標)が、前年同期に比べ5%以上減少した事業主。

※特例により、生産指標の確認期間要件が3カ月10%以上低下→1カ月5%以上に緩和
※その他の支給要件など制度の詳細は、最寄りの労働局の助成金窓口へ

助成内容と
受給できる金額
助成率(中小企業) 助成率(大企業)
休業を実施した場合の
休業手当または
教育訓練を実施した場合の
賃金相当額、
出向を行った場合の
出向元事業主の
負担額に対する助成(率)
※対象労働者1人1日当たり
8,330円が上限
(令和2年3月1日現在)
4/5
(解雇等を
行わない場合は
9/10)
2/3
(解雇等を
行わない場合は
3/4)
教育訓練を
実施したときの加算(額)
1人1日当たり1,200 円
支給限度日数 1年間で100日、3年間で150日
+2020年4月1日~6月30日

【制度の詳細内容】
厚生労働省HP(「雇用調整助成金について」)

【問い合わせ先】
都道府県労働局

ハローワーク

資金繰りに関する支援制度「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

経済産業省の支援策の1つで、日本政策金融公庫等が新型コロナウイルス感染症による影響を受け、業況が悪化した事業者(事業性のあるフリーランスを含む)に対して、融資枠別枠の制度。信用力や担保に依らず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げを実施。据置期間(元本を返済せず利子だけを返済する期間)は、最長5年。

【対象】
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する事業主

①最近1カ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少
②業歴3カ月以上1年1カ月未満の場合等は、最近1カ月の売上高が、次のa~cいずれかと比較して5%以上減少

a.過去3カ月(最近1カ月を含む)の平均売上高
b.令和元年12月の売上高
c.令和元年10~12月の売上高平均額

※個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)は、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応

【資金の使いみち】運転資金、設備資金
【担保】無担保
【貸付期間】設備20年以内、運転15年以内
【うち据置期間】5年以内
【融資限度額(別枠)】中小事業3億円、国民事業6,000万円
【金利】当初3年間基準金利▲0.9%、4年目以降基準金利

※「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に「特別利子補給制度」を併用することで、実質的に無利子化できる

【制度の詳細内容】
経済産業省 支援策パンフレット

【問い合わせ先】
相談窓口一覧

※ぐるなび大学でも、中小規模の飲食店に向けて「新型コロナウイルス対策支援制度活用セミナー」の動画を配信中。こちらも参照いただきたい。
《ぐるなび大学》
中小規模の飲食店様向け新型コロナウイルス対策支援制度活用セミナー 動画

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