集客につながる情報発信とは?
感染予防策の発信が必須。Webの更新も一層重要に
先述したとおり、コロナ禍を機に、これまで以上に重要になっているのが「顧客リスト」の存在だ。「外出自粛や勤務形態の変化、繁華街を含む人混みを敬遠する意識が高まっていることから、店の前を歩いている人の数は減っています。この状況で店頭の掲示物で情報を発信するだけでは、大きな訴求効果は期待できません」と三ツ井氏。連絡先を含む顧客リストを持っていれば、常連など明確なターゲットに対し、店の営業状況や取り組みについてダイレクトに伝えることができる。
さらに、前ページでも触れたとおり、コロナ禍の影響で客層が変わっている可能性もあるため、「もともと顧客情報を持っていたお店も、営業再開後の新規客の情報収集に力を入れていただきたい」と三ツ井氏。情報の集め方は、SNSのフォロー促進、LINE会員の募集、店内アンケート、名刺交換、ネット予約と電子台帳との連携などさまざま。ポイントは、自店の客層にアプローチしやすいツールが何かを意識すること。「例えば、若い人ならInstagramなどのSNSやLINE、もう少し上の世代ならメール、さらに年配の方であればハガキなど。自店の客層を見極め、アプローチしやすい情報を集めたい」と三ツ井氏。ただ、コロナ禍では日々取り巻く状況が刻々と変化していき、いつ何が起こるかわからない。こうした状況では、発信した情報がいかにスピーディーに顧客のもとに届くかが重要となる。例えば、ハガキなどでDMを発送する場合、内容を決めて印刷しても、郵送で顧客に届くころには状況が変わってしまうことも考えられる。そのため、「できるだけデジタルツールでの配信を優先したほうがよいです」(三ツ井氏)。
では、今どんな情報を発信するべきなのか。「まず、しっかり伝えたいのが、消費者の関心度が高い衛生管理に関することです。マスク着用やテーブル間の距離や間仕切りなど、来店客が直接目にする部分の対策だけでなく、バックヤードの清掃や仕込みをする際の衛生対策なども発信すれば、より安心感は高まるはず」と三ツ井氏は語る。また、売りの料理はもちろん、お得感や特別感を訴求できるようなメニューやコースをアピールするのも効果的だろう。さらに、前ページのアンケートQ6にもあるとおり、誕生日などの記念日で飲食店を利用したいというニーズは依然低くない。誕生日や誕生月といった顧客情報を獲得できていれば、直接アプローチして来店を促すのも有効だろう。いずれにしても、当面の間は、どんな情報を発信する際も、どこかに必ず衛生管理や感染予防策に関する情報を入れておきたい。「今は、安全・安心であることが選ばれるための大前提。その上でお得感や特別感をアピールできれば、来店の確率はぐっと高まるはずです」(三ツ井氏)。
加えて、テキストだけではなく写真や動画を活用すると伝えられる情報量が飛躍的に増える。「私がコンサルティングを行っている飲食企業が経営するグアムの店舗では、店内での感染予防策の詳細を動画にしたところ、予想以上の再生回数を記録し、集客にもつながるなど大きな反響を呼んでいます」と三ツ井氏。ただ、動画をアップする場合、内容には十分留意する必要がある。「情報量が多い分、動画は炎上のきっかけにもなって、逆に店舗のイメージを下げてしまいかねません。映っている物や状況、言葉遣いが適切か、見る人に不快感を与えないかなど、事前にチェックを行うべきでしょう」(三ツ井氏)
また、情報発信ツールとして忘れてはいけないのが店のホームページなどのWebサイトだ。アンケートQ10(上)でも、現在、飲食店の情報を「店のホームページ」や「飲食店検索サイト」から得ている人が多いことがわかる。「普段SNSなどをあまり使わない人が、外出自粛などで店の様子を簡単に見に行けないため、店の営業状況やテイクアウト販売などについて調べるために、ホームページなどを検索する機会が増えたのかもしれません」と三ツ井氏は分析する。SNSやメールなどでの情報発信ばかりに気を取られて、ホームページやWebサイトなどの情報を最新のものに更新していないと、衛生管理も含めてきちんと感染対策をしていない店と思われかねない。「いつまでも古い情報を掲載していると、極端に言えば『コロナの影響で店を閉めてしまった』と思われる可能性すらあります」(三ツ井氏)。いつ、誰が、どこから情報を探しているかわからないからこそ、常に鮮度の高い情報を更新する意識が重要だ。