インタビュー①/外食業界の現状は?
V字回復を遂げる店と苦戦する店の二極化が進行
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、外食業界全体が売上の大幅な落ち込みを経験してから、はや半年が経過した。収束にはなお時間を要しそうな状況の今、外食業界ではどのような変化が出てきているのだろうか。飲食コンサルタントの三ツ井創太郎氏は、現在の概況について、「立地や業態ごとに回復状況にはばらつきがあり、特に最近は、V字回復を遂げている企業や店と、そうでないところが明らかに分かれてきています」と指摘する。
エリア・業態別で見ると、人混みを避ける意識の高まりやリモートワークなどが増えたことから、繁華街やオフィス街には依然としてコロナ以前の水準ほど人が戻っておらず、中でも繁華街の居酒屋業態は8月の売上が前年比50~60%という調査結果もあり、厳しい状況が続く。対照的に、都心部周辺の昼間人口と夜間人口のバランスがとれたエリアや郊外では回復が進んでいる。特に、郊外立地で食事主体の業態は、「自宅周辺で家族そろって外食を楽しみたい」というニーズをつかみ、売上が前年同月を超える店も出ている。
加えて、直近の傾向として三ツ井氏は、生存戦略から成長戦略へシフトする外食企業が増えてきた点を挙げる。「春から夏にかけては、『コロナ禍をどう生き残るか』という資金繰りの面が喫緊の課題だったのに対し、現在は、新型コロナ対策で金融機関などから受けた緊急融資の返済が数年以内に始まるのを見据え、出店計画など成長戦略を考え始める企業も出てきています」。
実際、三ツ井氏の元にも「家賃が高い都心の店舗をたたみ、ファミリー需要を取り込める店を郊外に出したい」「食事主体の業態へ転換を図りたい」といった相談が寄せられているという。
一方で、業界全体が徐々に回復傾向にある今は、気の緩みが生じやすいタイミングでもある。「この半年間、未曽有の危機をさまざまな努力や工夫で乗り越えてきて、経営者やスタッフを含め、店全体に疲れが溜まっている状況ではないでしょうか。それがサービスレベルの低下につながったり、あるいは、コロナ以前のオペレーションをそのまま続けているために、消費者のニーズに合わなくなっていたりするケースも見受けられます」と課題を指摘する。入店時のアルコール消毒や検温、会計時の接触を減らす工夫など、ウィズコロナ時代の「新しい日常」が根付きつつある昨今。そうした新しいオペレーションを組み込んだ上で、来店客のニーズを汲み取りながら、いかに価値ある体験を提供できるかが飲食店には問われている。