インタビュー③/今年の忘年会対策で必須なことは?
衛生対策とその発信を徹底。幹事目線で“選ばれる店”に
消費者がなじみの店の中からQSCのレベルを重視し、飲食店を選ぶ傾向は、忘年会シーズンも続くと三ツ井氏は見る。「だからこそ、今のうちに改めて自店の価値や強みを洗い出し、お客様の来店から退店までのストーリーの中で、それらをどう打ち出してQSC向上につなげられるか、スタッフも交えて話し合ってみてください」と提案する。激動の1年の終わりに、いかに来店客に安心して楽しい時間を過ごしてもらうか、という視点で、感染防止策も含めたQSC向上に努めたい。
また、自店で実施している感染防止策を写真や動画で発信したり、個室がある場合はしっかりアピールしたりすることも、今年の忘年会対策では重要だ。「例年以上に、店選びに気を遣う幹事さんの目線に立った情報発信を意識しましょう。幹事さんが上司に『なぜこの店を選んだのか』『どんな感染症対策が取られているのか』を聞かれたときに答えやすいよう、ぐるなびの店舗ページなどでも感染対策を具体的に紹介するとよいでしょう」(三ツ井氏)。
忘年会のプランやコースについても、例年とは違う工夫や配慮が求められる。今年は大人数の宴会が減る代わりに、少人数での開催や、当日都合のつく人同士が誘い合う会食など、例年とは形態の異なる忘年会が増えることが予想される。そのため、「2名から利用可」「当日対応可」といった柔軟なプランへのニーズが高まりそうだ。また、感染予防の観点から、大皿料理を銘々盛りに変える、鍋料理を1人前ずつの小鍋で提供するなどの対策も必要になる。ここでの注意点として三ツ井氏は、「これまで大皿に盛っていた料理を人数分に分けて盛ると、1人前の量がさびしく見えがちです。器選びや盛り付けで華やかさを補う工夫をしましょう」と助言する。
販促の面では、顧客に迅速かつダイレクトに情報を届けるためにもLINEアカウントやメールアドレスといった、デジタルの顧客情報(デジタルアドレス)の獲得に今から注力することを三ツ井氏はすすめる。方法として、特典付きのアンケートの実施や、SNSアカウントのフォロー促進など、具体的なアプローチを用意しておきたい。
そうして得た情報を活用し、Webマーケティングを行う際、気をつけるべきポイントの1つが、「やりっぱなしにしない」こと。「それぞれの投稿や施策が、どれくらいの来店につながったのか、効果測定と結果を踏まえた改善が必須です。それを繰り返すことで顧客のニーズが可視化され、独自の販促ノウハウも蓄積されます」(三ツ井氏)。
また、忘年会が少人数化する分、来店組数の増加が予想されるため、サービスの質を落とさない適切な人員配置や、よりオペレーションの効率化を考慮したプランやメニューの開発も求められる。さらに、今年の忘年会対策においては、食材ロスの削減をはじめとするコストカットの取り組みも重要性を増す。例年通りの客足が見込めない中で、売上の減少分をコストカットで補う考え方だ。原価率や出数を分析してメニューを絞り込むなど、工夫の余地は大きい。ただし、メニュー数の減少は、顧客満足度の低下につながる恐れもある。注文してほしいメニューを、おすすめとグランドメニューの両方に掲載するなどして、メニュー数が減った印象を与えないように工夫したい。