2020/12/22 特集

【PART2前編】前進し続けるリーダーたちの覚悟と戦略 外食業界、それぞれの挑戦 ~激動の2020年から2021年へ~(2ページ目)

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瀧川 真雄(株式会社エムシス 代表取締役)

物件が空き始めたことで、一等地への出店攻勢へ。2021年は新業態で飛躍を目指します

1979年生まれ。岩手県出身。東京の大学に進学し、株式会社グローバルダイニングのカフェなどでアルバイトをする中で、飲食業での独立を志すように。大学卒業後、宮城・仙台の飲食店で5年勤務。2007年に独立し、株式会社エムシスを設立。自社業態の開発にも力を入れており、将来的には東北を代表する飲食企業を目指している。
株式会社エムシス
●創業:2007 年●所在地:宮城県仙台市青葉区国分町3-6-11 アーク仙台ビル5F ●出店エリア:宮城(仙台)●創業当初はショットバーなどを運営。2010年に「焼きとん大黒」のFC店舗「焼きとん大国 稲荷小路店」をオープン。その後も仙台市内の一等地を中心に、同業態で店舗を展開。2020年は、ラーメン業態のFC店舗を含め、6店舗をオープンした。
焼きとん大国 上海ビル店
宮城県仙台市青葉区国分町2-5-14 上海ビル1F
https://m-sysinc.jp/shop/
2020年11月、東北随一の歓楽街、国分町のメインストリートの角地にオープン。カウンターとテーブル席の計25席で、30~40代のビジネス層を中心に集客している。

逆境でも地に足を着け、得意分野での勝負を決意

 2007年に宮城・仙台で創業し、、ショットバーなどを運営する中で、2010年に始めた「焼きとん大黒」(光フードサービス株式会社・愛知県)のFC店舗「焼きとん大国」がヒット。当時、仙台では焼きとんが珍しかったことに加え、国分町など一等地に出店し、広告には費用をかけずにファサードを目立たせて集客する戦略も成功。2019年までに「焼きとん大国」を仙台市内に6店舗展開しました。

 2020年を振り返ると、1~2月は全店舗好調で、3月も売上の昨対比は90%以上と、そこまでコロナの影響はありませんでした。ところが、3月末に仙台市内の歓楽街にある飲食店でクラスターが発生したこともあり、一気に客足が鈍化。特に、仙台市北部の郊外にある泉中央店は集客力が落ち、1日の来店者数が3人で売上8000円という日もありました。メインの客層だった年配の方が早々に外食を控えたことが影響したのだと思います。こうした状況を踏まえ、4月の早い段階で泉中央店など業績のよくない3店舗を休業し、オープンしたばかりの広瀬通り店を含む4店舗を社員だけで営業。アルバイトは全員休みにしましたが、給与の6割を払って雇用は継続しました。一方で、当時は20時までの時短営業で夜の売上が見込めなかったため、期間限定でランチ営業と弁当のテイクアウト販売も開始し、一定の売上を上げることはできました。どちらも新たな挑戦でしたが、メニュー開発を含めて私はほぼノータッチ。自発的に動く社員を見て、頼もしく感じました。

 新しい取り組みの効果を感じる一方で、失敗したことも。それまでは、臨店チェックを毎月行っていたのですが、社員のみでの営業ということもあり、4~5月の2カ月間はあえて行いませんでした。しかし、社員同士の仲がよいことが悪いほうに働いたのか、お互いに甘えが出てしまったようで、久々に店に行くと明らかにQSCが下がっていたのです。すぐに臨店チェックを再開しましたが、元のレベルに戻すのに3~4カ月かかりました。この時期、将来に向けてデリバリーやECへの参入も検討しましたが、慌ててビジネスモデルの違う事業に手を出すより、得意分野である店内営業の質を磨くことに集中しようと考えました。

好立地の物件が空き始め、一等地戦略に追い風

 そんな中、5月ごろから飲食店などの閉業で物件が空き始めました。当社も先の見通しがつかない状況でしたが、ここで良い物件を確保しておけば、将来の成長につながると考え、出店に向けて動くことにしました。好立地の物件を探しつつ、人員を増強するなど、秋以降の新規出店を目指して準備を進めました。ちょうど5月に、以前から予定していた新しいセントラルキッチンの稼働がスタートし、最大30店舗分まで対応できる体制が整ったことも、出店攻勢に前向きになれた要因です。

今後の店舗展開を見据えて、6月にセントラルキッチンを移転拡張し、最大30店舗分まで対応できる体制を整えた

 緊急事態宣言解除後は、休業店舗の営業を順次再開。ただ、感染予防のために各店舗の席数を3分の2に減らしたため、客単価を上げようと、5月中旬から新たに「牛ユッケ」「牛レバー」をメニューに加えました。共に1309円と、既存メニュー(200~500円)に比べて高単価でしたが、予想以上に人気で、狙い通り客単価も上がりました。同時に、オフィス街の店舗では、夜定食も開始。こちらも好評でしたが、お客様が戻るにつれオペレーションの負荷が大きくなったため、6月で終了。このころは、日々状況が変わる中、お客様のニーズと現場の状況を考え、臨機応変に対応しました。

 もう一つ、2020年の動きとして東京の人気店「つけ麺 和(かず)」(株式会社KKJAPAN)の仙台への誘致もあります。広瀬通り店のために確保した物件が19坪で、「焼きとん大国」の適正坪数(約10坪)よりもやや広かったため、以前から親しくしていた「つけ麺 和」のオーナー・金井和繁さんに「物件の半分を使って出店しませんか」と声をかけたんです。どちらの業態もターゲットは30~40代の男性ですが、来店動機は違うので、互いの利益になるだろうと考えました。こうして、4月に2店舗を併設して同時オープン。この2業態の組み合わせに手応えを感じ、コロナ禍の休業を利用して、20坪あった泉中央店も半分を「つけ麺 和」にする改装工事を行い、8月にリニューアルオープン。9月には、FC店舗として当社が運営する「つけ麺 和 仙台駅東口店」を、新店の「焼きとん大国東口アルファビル店」と併設して同時にオープンしました。

 こうして出店やリニューアルを進める中、既存店にも徐々にお客様が戻り、10月の昨対比(既存店のみ)は約85%にまで回復。11月には、国分町通りの好立地に9店舗目となる「焼きとん大国上海ビル店」を出店しました。

 2021年は、春に仙台市内の中心街に自社開発の新業態として餃子酒場を出店する予定です。餃子を選んだのは、昔から普遍的に人気があるメニューだから。ただ、餃子以外に差別化のポイントを作りたいと考え、焼きとん串を煮込んだ「煮込み串」をもう一つの看板に据えようと考えています。コロナの影響が大きく、飲食業界全体が厳しい状況ですが、こうした普遍的なメニューを持つ大衆酒場が完全に廃れることはないと考えています。と同時に、柔軟な変化も必要なので、今後も「焼きとん」や「餃子」といった軸のメニューは変えずに、サイドメニューなどはニーズに合わせて変化させていきます。また、居酒屋が食事だけでなくコミュニケーションを楽しむ場であることも普遍的なもの。今まで以上に、店内でのお客様との会話を通したファンづくりを大切にしていきたいですね。

 今後も一等地への出店戦略は変えず、良い物件が空けば出店ペースを速めたいです。中期の目標は2023年6月までに18店舗、年商10億円。将来的には自社業態を展開し、60歳までに200店舗、年商100億円、東北を代表する飲食企業になりたいです。

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