2020/12/22 特集

【PART2前編】前進し続けるリーダーたちの覚悟と戦略 外食業界、それぞれの挑戦 ~激動の2020年から2021年へ~(4ページ目)

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赤塚 元気(株式会社DREAM ON 代表取締役社長 CEO)

ランチやカフェ業態を強化しつつ、飲食店に求められる価値を見極めたい

1976年生まれ。学生時代に東京・下北沢の居酒屋「汁べゑ」でアルバイトを経験し、飲食の道を志す。大学卒業後、地元の愛知県一宮市内で父親が経営する企業に入社し、居酒屋事業を継承。2007年には社長に就き、名古屋で基盤を固めた後、2012年からは東京にも進出。全国1,700店舗以上が参加する「居酒屋甲子園」では、過去2回、優勝店舗を輩出している。
株式会社DREAMON
●創業:1963年(会社設立は2018年)●所在地:愛知県一宮市八幡2-7-1プレジデント八幡101●出店エリア:東京(渋谷など)、愛知(一宮など)●東京を中心に、愛知の一宮や名古屋に居酒屋、バル、カフェなど21店舗を展開。2020年は、商業施設への出店が続き、「ESPRESSOD WORKS 名古屋」(9月オープン)など、6月から毎月1店舗のペースで4つの新店をオープンした。
DRA エイトマン
東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK North 3F
https://r.gnavi.co.jp/my4mpuyn0000/
2020年8月、東京・渋谷の商業施設「MIYASHITA PARK」の開業とともにオープンしたバル。自然派ワインや和の食材を使ったピザやタパスなどを売りに、幅広い年齢層を獲得する。

商業施設に出店した新店が予想以上の売上を記録

 大学卒業後に父が経営する会社に入社し、居酒屋の事業を継承。以来、地元の愛知で基盤を固め、和食、イタリアン、サムギョプサルと、異なる業態の出店を重ねました。2012年に東京に進出してからは、拠点を東京に移し、店舗を展開。現在は、バルやカフェ業態にも注力しながら、東京で12店舗、愛知で9店舗を運営しています。

 新型コロナの感染拡大で集客力が落ちたのは、東京が3月、愛知が4月頭くらいから。特に愛知の一宮は宴会の獲得で成功していた居酒屋業態が多く、大きな打撃を受けました。その後、収支のバランスを考慮して、売上が1日13万円に満たない店は休業することに。結果、東京と一宮の各3店舗に社員を集め、営業を継続。一時的にランチ営業やデリバリー、弁当の販売も行いました。一定の売上はありましたが、それ以上に、デリバリーへの本格参入などを検討する上での課題を見つける、いい機会になったと思います。

 そんな中、4月には約20名の新卒社員が入社。もともと当社の初期の人材育成は店舗ではなく人事部が担当しており、入社後はオフィスに出勤し、バリスタの技術や調理など専門技術を学ぶので、影響はありませんでした。6月末までオフィスで研修を行い、夏にオープンした新店舗に配属されました。

 また、この時期は、社員向けに理念共有のためのミーティングも実施。料理人などのポジションや入社時期などによって、社員をいくつかのグループに分け、東京・渋谷のオフィスに来てもらい、理念や今後の会社の展望について話をして、終了後はデリバリーでお酒や食事を注文して飲み会を開きました。勤務している店が違う仲間と顔を合わせ、普段できない話や思いを共有することで、それぞれの役割や現状の課題などを認識する場になり、モチベーションアップにもつながったと思います。いま振り返ると、夏以降に新店オープンが続いて忙しくなったので、春先にこういう時間を持てたことは良かったと思います。

休業期間中、社員を職種や年代別のグループに分けて、東京・渋谷のオフィスでミーティングを実施。改めて理念の共有を徹底

 6月以降、経済が少し動き始めてからは、休業店舗の営業も再開。そんな中で、6月に「横浜DRAセブン」(「NEWoMan 横浜」)、7月に「DRAスタンド/ウラドラ」(「日比谷グルメゾン」)、8月に「DRAエイトマン」(渋谷「MIYASHITA PARK」)、9月に「ESPRESSOD WORKS 名古屋」(「RAYARDHisaya-odoriPark」)と、4カ月連続で新しい商業施設の開業と同時に新店がオープンしました。これが、予想を上回るヒットを記録。「横浜DRAセブン」は坪月商が70万円を超えるなど、当社の歴史の中でも、上位に入る売上を記録し、休業期間の売上を補填できました。

 当社が出店した商業施設はいずれも、消費者が「あまり外出したくないけど、あの施設のオープンぐらいは行こう」という動機を与えられるスポットだったのだと思います。同時期に開業して苦戦していそうな商業施設もあったのでラッキーでした。ただ、同じ商業施設内でも、1、2を争う集客力を発揮できたのは、ほかにも要因があると考えています。それは、もともと居酒屋など夜に強い業態を持っていた当社が、ここ数年でランチ向きの業態を強化したことで、昼も夜も集客できるノウハウを身につけていたことです。

 ランチやカフェに力を入れたのは、世界的なトレンドを意識してのこと。以前から海外では消費のキーパーソンが男性ではなく女性に変化し、夜型から朝型へ、飲酒からコーヒーへという流れも生まれています。経営者仲間と話をしていても、居酒屋だけを運営していることへの危機感を感じている人は増えています。今回、コロナ禍で高齢者などが外出を控える中、外食の客層を見ると、若い女性の比率が高くなってきています。そして、これを一過性の現象だとは考えていません。日本も海外と同じような変化の中にいて、コロナ禍で変化のスピードが10年くらい速くなっただけ、と捉えています。ですから、早くからその動きを読んで準備していた会社は、今回影響を受けづらかったのではないかと思います。

これから求められるのは「本質」と「時代を読む力」

 今後、力を入れたいのは、既存業態の中で人気のあるメニューの専門店化です。その一環として、2021年2~3月オープンを目標に、一宮で生食パンとバスクチーズケーキの専門店の出店準備を進めています。この店を出すにあたって意識しているのが、株式会社ダイニングイノベーショングループが出店した「Blue Star Burger」。つまり、オーダー・決済・受け取りの全てをスマホアプリを使い、非接触で行うスタイルにしたいと考えています。また、バスクチーズケーキが人気商品に成長すれば、EC事業への参入に向けて主力商材となりうるのではと期待しています。さらに、初進出となる茨城県・鹿嶋市にFCでベーカリーカフェも出店予定です。

 その先に見据えているのは、かねてからの目標である上場です。そのために、業態開発や店舗展開、M&Aを進めていく予定ですが、重要なのは消費者が感じる飲食店の価値とは何かを見極めること。店舗を多く持つことのメリット以上に、リスクが浮き彫りになりつつある今、消費者のニーズを捉え、郊外でのカフェ業態やEC、デリバリー、食事業態など広い視野で事業を展開していきたいです。

 2020年は飲食業界が変わらざるを得ない状況になりましたが、今後も大切なのは「本質」、つまり食事のおいしさだと思います。当たり前のことですが、時代がどう変わってもおいしくないと生き残れません。それがこれまで以上に厳しく評価される時代になると考えています。同時に、「時代を読む力」の重要性も感じています。海外を含めたトレンドや情報をつかみ、先を読みながら経営者がどう舵を切るのか。私の場合、経営判断をする上で、大きな助けになっているのが尊敬する経営者の方々とのコミュニケーションです。飲食以外の方のお話を聞くことも自分に新たな視点を与えてくれています。また、積極的に海外旅行をすることで料理はもちろん、デザイン、業態などについての感性も研ぎ澄まされると思います。今後も新たなアイデアや時代を読み取るためのアンテナを張り巡らし、挑戦を続けていきたいです。

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