2021/01/26 特集

多様化する店のスタイル&空間・空き時間活用法 異業種とのハイブリッド、ゴーストレストラン、間借り・間貸しetc.――(2ページ目)

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複数の“ゴーストレストラン”を運営

タンしゃぶ亭[広島・中区薬研堀]

自社のデリバリー業態のFC展開も視野に

 広島市内を通る広島電鉄本線・胡えびすちょう町停留場から徒歩5分の場所に2019年11月オープンした「タンしゃぶ亭」。「牛タンしゃぶしゃぶ」(2人前4800円~)などが売りの牛タン専門店だ。店内は個室5部屋のみで、オーナーの長野淳一氏を含めて3人ですべての業務を行っている。

 そんな「タンしゃぶ亭」が、今、力を入れているのが、店のキッチンを使った「タンしゃぶ亭」とは別業態のデリバリー専門店、いわゆる“ゴーストレストラン”だ。

「タンしゃぶ亭」のデリバリーの1番人気。分厚くカットした牛タンがぎっしり並び、食べ応え十分。ほか、「薄切り牛タン炙り重 上」(1,580円)なども好評

 「もともと2020年春に広島市内でUber Eatsなどの宅配サービスが始まるのに合わせて、『タンしゃぶ亭』としてのデリバリーはスタートさせていました」と長野氏。しゃぶしゃぶ用にスライスした牛タンなどを活用して、「厚切り牛タンステーキ重」(1480円~)をはじめ、20種の弁当などを、いくつかのデリバリー専門サイトで販売。素材にこだわっている分、他店のデリバリーメニューに比べて高単価だったが、他では食べられないメニューであることや高級感が引きとなって昼夜問わず注文が入り、コロナ禍での売上増につながった。その後、夏前に客足が戻ってきたことから、デリバリーを完全にやめる店もあったが、「再び大きな感染の波が来たときに備えておきたい」(長野氏)という考えから、デリバリーをさらに強化することに。そこで着目したのが、ゴーストレストランだった。ただ、「ノウハウもなく、スペースや人員が限られる中で、やみくもに始めてもうまくいかない」(長野氏)と考え、まずはデリバリー専門店のFCに加盟することでゴーストレストランのノウハウを学ぶことにした。料理のジャンルは自店とは全く違うものにしたいと考え、デリバリー業態として全国的にFC展開をするお茶漬け専門店を8月に、同じくすき焼き専門店を10月にスタートした。スタッフは増員せず、キッチンや冷蔵庫を整理して食材や包材の収納スペースを確保。各デリバリーメニューの調理工程をできるだけ効率化して、忙しい時間帯でもスピーディーに対応できるようにした。こうして、今まで通り3人で店内営業をしつつ、デリバリー専門サイトを活用して3店舗分のデリバリーにも対応。多いときはデリバリーだけで月の売上が100万円を超えることもあり、売上の柱の一つになっている。

いくつかのデリバリー専用サイトを利用しているため、タブレットを複数台使い、それぞれのオーダーに対応

 2021年は、広島のハバネロの生産者が作るレトルトカレーを使った、激辛料理専門のゴーストレストラン「カラゲンキ」をオープン予定。「現状の厨房設備・人員のまま、ゴーストレストランを5店舗は運営できると考えています」と長野氏。加えて、「タンしゃぶ亭」のデリバリー業態をゴーストレストラン用にFC展開する準備も進めており、さらなる飛躍を目指している。

オーナー 長野淳一 氏
愛知・名古屋の飲食企業勤務を経て独立し、「タンしゃぶ亭」を開業。「食育インストラクター」などの資格を生かした料理教室も実施。コロナ禍を機に、デリバリーにも注力する。
タンしゃぶ亭[広島・中区薬研堀]
広島県広島市中区薬研堀2-3 2F
https://r.gnavi.co.jp/nw2xd5jv0000/
https://tanshabutei.jp/
広島市内でも随一の歓楽街・薬研堀に2019年オープン。落ち着いた空間で、全席完全個室。牛タンのしゃぶしゃぶを売りに、30~40代のアッパー層を中心に集客する。客単価は7,000円。

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