2021/01/26 特集

多様化する店のスタイル&空間・空き時間活用法 異業種とのハイブリッド、ゴーストレストラン、間借り・間貸しetc.――(6ページ目)

URLコピー

店舗を演劇の舞台として活用!

Ocean kitchen Co ひばりヶ丘本店[東京・ひばりヶ丘]

役者に店を箱貸しして、1日店長を任せることも

 東京・西東京市のひばりヶ丘駅近くに、2017年オープンした多国籍料理の店「Ocean kitchen Co ひばりヶ丘本店」。店内は、オープンキッチンとカウンター席、テーブル席、ソファの半個室の全20席で、こぢんまりとした空間だ。オープン以来、ランチ、ディナー共に地元住民を中心に集客してきた。

テーブル席の前にあるキッチン周りとカウンターを舞台として活用。手前のカウンター席も舞台の一部として使う

 そんな中、2020年7月から、週に2回、ランチ営業の代わりに店が主催する演劇の公演を行い、話題になっている。「もともと、常連のお客様の中に役者の方が多かったのですが、コロナ禍で予定していた舞台が中止になるなど、活動の場がなくなったという窮状を聞いたのがきっかけです。。当店も集客に苦しんでいたので、店を劇場として使うことで互いの利益になればと考えました」と、代表の鈴木浩介氏。来店した役者を通じて、仲間に参加を呼び掛けてもらいつつ、幅広く事業を展開する鈴木氏の人脈を生かして脚本家や演出家などの協力も得て、「ひばゲキ」と題した演劇の公演を行うことに。キッチンとカウンター席を舞台にし、キッチンの前にあるテーブル席2卓(8~10席)を客席に。昨年7月に第1回公演を実施してから、毎週日曜日と第2・第4水曜日の13時から約40分間の公演を行っている。入場料(大人1000円・中高生500円)は、出演者に支払い、上演後に多くの人が飲食していくため、店の売上にもつながっている。

コロナ禍で活動の場が失われた役者らを集めて、「ひばげき」と題した演劇の公演を店で実施。告知はパンフレット(写真)やSNSで行っている
  • 舞台稽古の様子。キッチンで演じるため、店で普段使っている調理器具なども小道具として活用している
  • 公演の日は、出演者が考案したドリンク(770円)を販売。注文した人には、その役者のサイン入りコースターをプレゼント

 また、「ひばゲキ」に参加した役者にディナータイムの店長を務めてもらう“1日店長”も実施。役者には2万5000円で店舗を箱貸しし、料理は店長を務める役者が用意。料理の売上はその役者のものになる。ドリンクは店が用意して、価格を通常営業時の約1.5倍に設定。ドリンクの売上の4割を役者に支払っている。「1日店長は、これまで6回実施。若手の女優さんにお願いすることが多く、当日はファンの方が多く来店されます。店としては、箱貸し代とドリンクの売上の一部が入るので、平日であれば通常営業より利益が高い日もあります」(鈴木氏)と、メリットを感じている。

 鈴木氏は、これを機に演劇プロデュースも行っており、今年春、「ひばゲキ」のメンバーで劇場での公演を予定。飲食店での空間活用を出発点に、新たな展開を見据えている。

代表 鈴木浩介 氏
沖縄県出身。高校を卒業後、22歳で独立し、小売業やイベントプロデュース、人材派遣業など、さまざまな事業を手掛ける。2017年に「Ocean kitchen Co」を開業し、飲食業にも参入。
Ocean kitchen Co ひばりヶ丘本店[東京・ひばりヶ丘]
東京都西東京市ひばりが丘北3-5-18 1F
https://r.gnavi.co.jp/k8c8c92c0000/
西武線・ひばりヶ丘駅から徒歩3分の路地にオープン。ピザやタコライスなどを売りに、30~40代の女性を中心に集客。親しみやすい接客で、地元住民のリピーターも多い。

全6ページ