2021/01/26 特集

多様化する店のスタイル&空間・空き時間活用法 異業種とのハイブリッド、ゴーストレストラン、間借り・間貸しetc.――(4ページ目)

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昼は「専門店化」で“二毛作”

魚と炭火 炉ばたのぎんすけ 中津店[大阪・中津]

オペレーションの軽減と利益の出る原価を両立

 大阪・梅田から1駅の中津駅近くに、2020年3月オープンの「魚と炭火炉ばたのぎんすけ中津店」は、居酒屋「ぎんすけ」ブランドを展開する株式会社遊人の最新店舗。開店以来、夜のみの営業を続けてきたが10月に方針転換し、昼は汁なし担々麺専門店、夜は居酒屋という、いわゆる“二毛作”を開始した。現在では昼の営業が、新たな売上の柱へと成長しつつある。

汁なし担々麺専門店

昼の営業では、赤を基調にしたのれんやのぼりを使ってアピール。遠くからでも目立つ
ゴマが効いた特製担々ダレに極太麺を絡めて食べる「汁なし担々麺」

 「起業した時からランチは絶対にしないと決めていました。スタッフの就業時間が長くなり、薄利多売になりがちだからです」と話すのは代表取締役・麻田俊樹氏。ただ、コロナの影響が長引くなか、9月頃から検討を始め、10月中旬にランチをスタートした。「看板の『汁なし担々麺(ダイブ飯付き)』(800円)は、『炉ばたのぎんすけ 中津店』オープン時からシメの一品として人気が高く、味も自信作。原価率が30%弱なので、専門店化できれば勝機があると考えました」と麻田氏は話す。

メニューブックでは「おいしい食べ方」を紹介。説明の手間を省き、デザートの注文を増やす狙いも
  • 汁なし担々麺の食後を意識した、さわやかな味の「杏仁プリン」(150円)も人気
  • 残った担々ダレとご飯を混ぜて楽しむ「ダイブ飯&玉子付き」セットは850円

 特にこだわったのが、オペレーションの簡素化だ。担々ダレや具材はまとめて仕込んで急速冷凍し、麺も冷凍の極太麺を使用。そのため、店内調理はネギを刻むだけという徹底した省力化を図り、スタッフの負荷増大という難題もクリアした。「元々、夜のメニューに汁なし担々麺を加えたのも、仕込みの手間を減らせるから。ランチなら1.2人で回せます」と麻田氏。初月から客数600人、売上50万円、20万円以上の利益を確保することに成功した。

夜の時間帯には白いのれんが掲げられ、ライトアップ。落ち着いた雰囲気へと一変

「ぎんすけのポテサラ」(写真右・390円)や「淡路玉ねぎのトロトロ焼き」(左・390円)など、原価を抑えながらも満足度が高い一品も開発

 汁なし担々麺専門店のメリットは、初期投資を抑えられる点にもある。「炉ばたのぎんすけ中津店」の場合、のれんやのぼり、器類などの準備で10万円程度。昨年秋以降、経営者仲間からFCのようなかたちでのオープン依頼が入り、すでに2社が営業を始め、今年も2社が決定。今後は全国に輪を広げていく予定だ。「FC化など考えてもいませんでしたが、デリバリーにも向いていますし、オフィス街なら需要はあるはず。少しでも力になれればうれしいですね」(麻田氏)。効果的な“二毛作”が業績回復の妙手となっている。

代表取締役 麻田俊樹 氏
大学卒業後に飲食店で修業し、2014年に大阪府淀川区で「焼鳥と焼野菜 ぎんすけ」を創業。現在は大阪市内を中心に5店舗を展開し、今年はセントラルキッチンの稼働も決まっている。
魚と炭火 炉ばたのぎんすけ 中津店[大阪・中津]
大阪府大阪市北区中津1-13-8
https://r.gnavi.co.jp/60dvfyke0000/
地下鉄中津駅から徒歩1分、全国から仕入れた食材を炭火で焼く炉ばた料理が評判。北海道直送の特大ホタテなどが人気で、30~50代を中心に幅広い客層から支持を集める。

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