2021/02/24 特集

お店の価値を高める! 利益を出す! モーニング・ランチの新戦略(2ページ目)

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朝からディナーの体験を! 新たな可能性を拓く「朝ディナー」

sio【東京・代々木上原】

朝食らしさを加えたオリジナルコースを提供

 東京・代々木上原駅近くにある「sio(シオ)」は、2018年7月にオープンしたレストラン。多様な食材や調理法を取り入れた現代フレンチを提供し、ミシュランガイド東京2020、2021にて一つ星を獲得。30~40代のビジネス層を中心に、クリエイターや実業家など感度の高い人からも支持を集めている。昨年春からは、ベトナム風サンドイッチのバインミーや「贅沢弁当」なども販売。東京・丸の内と渋谷にある系列の2店舗を含め、さまざまな試みを行っている。そして、1月から開始したのが、朝からディナーの体験ができる「朝ディナー」(7260円)だ。

ディナー体験と朝食らしさを両立したメニュー

朝食らしさを表現した「スフレオムレツ」。中は半熟に仕上げ、パルミジャーノレッジャーノやトリュフオイル、ビネガーなども使い、香り高い一品に
メイン料理として提供する「大山鶏のロースト甜麺醤のソース」。皮目をカリっと焼き上げ、ソースはコクのあるアジアン風味に。カボチャのピューレと香ばしく焼いた根菜を添えている

 「1月初旬、関東圏に再び緊急事態宣言が発出されることが確実となったとき、思いついたのが“朝ディナー”の営業です。『ディナー』の意味を『晩餐』ではなく、『正餐』として『1日の中で主となる食事』と捉え、朝からディナーを提供する。そうすれば、今まで来店できなかった客層も呼び込めるのではないかと考えました」と、オーナーシェフの鳥羽周作氏は振り返る。鳥羽氏は、1月7日に自身のSNSなどで「朝ディナー」の実施を案内。同12日からの営業を目指し、8日より1月分の予約を開始すると、予約はすぐに埋まったという。

  • スペシャリテである前菜「馬肉のタルタル」も提供。ビーツと馬肉を合わせており、「sioのディナー」体験を味わえる一品
  • 朝食メニューとして組み込んだ「帆立のグリーンサラダ」。グリルした帆立にフルーツやナッツなどを合わせ、ハマグリのエッセンスを加えたドレッシングを添えている
シメとして炊き立ての白米、漬物、シイタケの煮物、しらすとうずら卵、赤だしの味噌汁を用意。ご飯のおかわりも可能だ

 「朝ディナー」と名付けているが、ディナーのコースをそのまま提供するのではなく、「『sioのディナーらしさ』と『朝食らしさ』を両立させることを目指し、新しく構成しました」(鳥羽氏)。料理は全8品。ディナーの定番であるスープとスペシャリテの一つである前菜「馬肉のタルタル」、メイン料理(魚、肉料理)に加え、朝食らしさを表現するために、スフレオムレツやサラダを組み込んだ。そして、メイン料理の後には、炊き立てのご飯・味噌汁・小鉢・漬物がセットになったお膳も提供する。また、「朝ディナー」にはティーペアリング(4840円)を追加することが可能。「馬肉のタルタル」には広東紅茶を、「鰆(さわら)のポワレ」には水出し緑茶、「大山鶏のロースト甜麺醤(てんめんじゃん)のソース」にはプーアル茶をベースにカカオビネガーを加えたノンアルコールカクテルを合わせている。

料理と楽しむティーペアリング

  • 「朝ディナー」では、ティーペアリングも注文可能。魚料理に は水出しした甘みのある緑茶
  • 肉料理にはプーアル茶とカカオビネガーを合わせ、赤ワインのような果実感やタンニンを感じる1杯に

 現在(2月5日時点)の営業は、「朝ディナー」は8時30分~12時とし、ランチ13~16時、ディナー17~20時の3部制に。「朝ディナー」を開始すると、常連客が来店するだけでなく、夜の時間帯に外出しづらい子育て層や年配の人を中心に、1人客も多く来店。「勤務形態が変わった人が増えるとともに、朝の時間を有効に使いたいという、人々の新しい価値観の変化に合致したのでは」と鳥羽氏は話す。

 朝営業を行うため、スタッフの稼働時間を朝にスライドさせるとともに、仕込みをディナー提供後に行う必要はあるが、3店舗で仕事を分けて協力することで調整している。「今回の試みで、私自身、朝に大きな可能性があることに気付かされました。しかし、“本気で朝の外食を根付かせる”という気概で取り組まないと、絶対に良いものはできません。朝にどのような価値を提供していくか、全社を挙げて取り組んでいます」(鳥羽氏)。

 今後も「朝ディナー」は継続する予定。今年は東京のみならず、関西への新規出店も控えており、新たな挑戦に向け進んでいる。

sio【東京・代々木上原】
東京都渋谷区上原1-35-3
https://r.gnavi.co.jp/s279sby30000/
小田急線代々木上原駅から徒歩1分のビル1階に立地。感動的なおいしさを目指してジャンルレスにコース料理を仕立てている。現在は、テーブル席10席で営業する。
オーナーシェフ 鳥羽 周作氏
小学校の教員から32歳で料理人へ転身。都内の名店で修業し、2018年に独立。繊細かつ独創的な料理で注目を集める。

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