友人2人と、それぞれの個性が生きる店を出店。コロナ禍での一手はグランピング事業~株式会社京色 代表取締役 眞鍋 英司 氏~

調理師専門学校時代の友人たちと2007年に株式会社京色を立ち上げた眞鍋英司氏。京都の四条や祇園を中心に店舗を展開してきたが、コロナ禍でグランピング事業に参入した。そんな彼に、これまでの歩みを聞いた。

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目次
調理師専門学校時代の友人と3人で独立
店づくりで重視した、「店の雰囲気」「料理」「接客」のバランス
コロナ禍でスタートしたグランピング事業で飛躍を期す
伝統ある店がひしめく京都で、この世代を代表するような存在に
「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」

グランピング事業を成功させれば、飲食事業にも必ず恩恵があるはず

 調理師専門学校時代の友人と3人で2007年に株式会社京色を立ち上げた眞鍋英司氏。京都の四条や祇園を中心に店舗を展開してきたが、コロナ禍でグランピング事業に参入した。飲食企業がグランピング事業で生かせる強みとは何なのか。これまでの歩みや今後の展望などを聞いた。

――飲食業界を志したきっかけについてお聞かせください。

 私が飲食業界を目指したのは、母親が飲食店を営んでいた影響が大きいです。また、幼少時代から両親に居酒屋やスナックへ連れられて、「こんな楽しい雰囲気で仕事ができたらいいな」とも思っていました。料理への興味というより、「人が好き」「接客が面白そう」という理由で飲食業界を選びましたね。

 京都市内の京都食品衛生専門学校に進学し、そこで知り合ったのが、現在も一緒に会社を経営する藤原崇史と山内秀彰です。専門学校を卒業する当時から独立願望が強かった私は、「30歳で独立する」と決めており、藤原は和食、山内は洋食の道に進むという話を聞き、「お互いに違う道で修業し、将来一緒に店をやらないか」と声をかけました。

 その後、京都市内で10店舗以上を展開する「まんざら亭」に就職し、店長も経験しながら経営について学びました。社長の木下博史さんは大切な恩師です。当時、藤原と山内がそれぞれの修業先で腕を磨いていたので、私は人脈づくりと経営面の勉強をしようと考えていました。今振り返れば、3人が別々の道で頑張ったことがプラスに働いたと思います。周囲からは「友達とは絶対にやるな」と反対されましたが、創業から15年経った今もうまく経営できているのは、異なる道を究め、互いに尊敬し合える間柄であることが大きいと思います。

1977年、京都府出身。料理専門学校時代の友人2人と「10年後それぞれの道で腕を磨き一緒に独立しよう」と約束を交わした後、京都の創作居酒屋「まんざら亭」で10年間修業。その後、約束した藤原氏と山内氏と株式会社京色を設立。現在、京都市内で5店舗を展開するほか、2022年4月には新たにグランピング施設を開業した

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――独立後はどのように業態開発や店舗展開を進めていかれたのですか?

 30歳を迎えた2007年2月に株式会社京色を設立し、同年4月に「情熱食彩 京色」をオープンしました。社名の「京色」には、3人の母校である専門学校の呼び名だった「京食」と、「それぞれのカラーを生かした会社」という意味が込められています。

 創業店の「情熱食彩 京色」(四条)は、繁華街にある50席以上の店舗でした。30歳の独立を目指していたこともあり、当初は夢が叶っただけで満足でした。和食、洋食の世界で腕を磨いてきた2人が作る料理はおいしいし、売上も伸びていきました。そんな中で襲いかかったのがリーマンショックでした。一気に経営が厳しくなり、会社の資金を確認すると、資金が残っていない。このままではいけないと強く感じました。夢を叶えた後の目標を設定しないといけないことに、ようやく気付いたのです。

 リーマンショックの教訓から、「40歳までに3人の個性を活かした店を作る」という新たな目標を掲げ、2012年に「BANSAN京色」(烏丸)をオープンします。「情熱食彩 京色」との違いを意識し、「肉と野菜」をコンセプトにしたところ、うまくはまりました。「BANSAN京色」は路地裏にあるため、創業店のような幅広い年齢層をターゲットにした居酒屋スタイルではなく、月に1回は必ず足を運んでもらえる専門店を目指しました。最初は客足が伸びなかったものの、半年を経過した頃から徐々に軌道に乗り始めました。

 その後、2014年4月に藤原が中心となって運営する和食店「ふじや 京色」(烏丸御池)を開店。40歳までに3店舗を出すという目標を達成し、次の展開を考える中で、私が店長を務めてきた「BANSAN京色」を社員に任せようと考え、紹介を受けた祇園の物件で2015年10月に、おでんと鶏と天ぷらを売りにした「祇園晩餐」(祇園四条)をオープンしました。祇園の街にほとんどなかった「2軒目、3軒目に使える店」として認知され、常連のお客様が増えていきました。

 店づくりにおいて常に意識したのは「店の雰囲気」「料理」「接客」の3つのバランス。この3つが正三角形を描くように一定の水準を保てていれば、お客様は居心地が良いと感じ、リピーターができ、経営が軌道に乗ると考えています。

  • 「肉と野菜」をコンセプトに2012年にオープンした「BANSAN京色」。
  • 「ふじや 京色」。ともに起業した学生時代からの友人・藤原氏が店長を務める

――コロナ禍での取り組みや最近の状況についてお聞かせください。

 2019年6月には、シメの麺を食べられる店として「祇園 晩餐のあと」(祇園四条)をオープンしました。カウンター8席の店舗でしたが、テレビの取材を受けるなどして注目を集め、軌道に乗り始めたところでコロナ禍が襲ってきました。

 最初の緊急事態宣言が出た時は影響が大きく、一時的に閉店しテイクアウトに切り替えましたが、創業店の「情熱食彩 京色」は、宴会需要が見込めず早々に閉店を決断。ほかの店舗は時間を短縮しながら営業したところ、客足が戻っていきました。

 また、山内の持ち味を活かし、創作串揚げや洋食を味わえる「urayama 京色」(四条烏丸)をオープンしました。「祇園 晩餐のあと」も、揚げたての天ぷらを楽しめる「祇園 天ぷら晩餐」へとリニューアルし、それまで「情熱食彩 京色」で店長を務めてきた社員に任せています。今ではコロナ禍前の売上を超えた店舗もあり、影響を感じない水準まで回復しています。

  • 「urayama 京色」の店内。同じく友人の山内氏が店長を務める店であることと、京都市中京区の占出山(うらでやま)町で出店したことから命名
  • 「祇園 天ぷら晩餐」では、揚げたての天ぷらをリーズナブルに提供して、多くのファンを生んでいる

 コロナ禍によって「今後の飲食業界はどうなのだろう」と不安を抱いた時期もありました。経営者としてこの先をどう描くべきか悩んでいたところ、同業者の先輩から「美山(みやま)の酒蔵を見に行かないか」と誘われました。京都人にとって、京都府の北部、南丹市に位置する「美山」は一種のブランドです。美しい山や川など、豊かな自然がある。ちょうどグランピングが流行り始めた時期で、「こんなところに料理人が手掛けるグランピング施設があったら面白いのでは」と考え、実現に向けて準備を進めていきました。

 美山には「かやぶきの里」という観光施設があり、この近くには「大石酒造」という酒蔵があります。その敷地の一部を借りることができ、2022年の4月末には「美山グランピング かやグラ」をオープン。京都市内でイタリアンを経営するシェフと一緒に、美山の食材を使った料理を提供しています。専用の窯で焼いたピザや、かまどで炊いたご飯、美山で採れた卵を使った出し巻きなどが好評です。美しい自然という飲食にはない魅力を売りにしながらも、飲食業の強みも生かすことができ、お客様に満足していただけるのがうれしいですね。

2022年の4月末にオープンした「美山グランピング かやグラ」。美山の食材を使った料理を売りにしている

――今後の展開と展望についてお教えください。

 現在メインで携わっている「美山グランピング かやグラ」を軌道に乗せ、縁ができた美山の活性化に貢献したいです。先日も、消防団の方や近所のおばちゃんたちが様子を見に来てくれました。コンビニまでも距離があり、何にもない場所だからこそ、この地域の人々の役に立ちたい。これまで美山に興味がなかった私が、目をキラキラさせながらこんな話をしていること自体、面白い話ですけどね。

 以前は「いつか東京に進出したい」と考えていました。今もその気持ちがゼロになったわけでありません。一見遠回りのようですが、美山でのグランピング事業は、今後につながる気もしています。コロナ禍は収束していませんが、逆に良かった面もあったと思うようになりました。藤原や山内だけでなく社員の思いが一つになり、結束力が高まったんです。グランピング事業もコロナ禍がなければ手掛けていなかったわけで「ピンチこそチャンスだ」と感じています。

 今の目標は、50歳になるまでに何かしらの結果を出すこと。お金儲けではなく、自分が納得いく何かを形にしたい。その一つが「かやグラ」です。グランピング事業を成功させれば、既存の店舗にも必ず恩恵があるはずで、京都市内で飲食店をやっていることを伝えると「今度ぜひ行きます」と言われることも多く、相乗効果も生まれています。

 私が飲食業界に入った時、恩師の木下社長は40代半ばで、気付けば私も同じくらいの年代です。今後は、伝統ある店がひしめく京都で、この世代を代表するような存在になり、京都の食を盛り上げたい。あの時、木下社長に憧れたように、私も若い世代から目標とされるような人間になりたいですね。

リーダー×一問一答

■経営者として一番大切にしていること
店の雰囲気、接客、料理を正三角形にすること

■愛読の雑誌やWebサイト
「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」

■日課、習慣
朝、まき火でお米を炊くこと
サウナに入ること

■今一番興味があること
アユ釣り

■座右の銘
「有言実行」「鬼に金棒」「急がば回れ」

■尊敬している人
木下博史氏(株式会社ステップ代表取締役/「まんざら亭」などを経営)

■最近、注目している店舗・業態
グランピング事業が今後どう展開されていくか

■COMPANY DATA
株式会社京色
京都府京都市東山区四条通大和大路東入末吉町95
https://www.kyosyoku.com/company.html
設立:2007年
店舗数:飲食店5店舗、グランピング事業5店舗
従業員数:82人(社員12人)

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