2011/07/05 特集

シェフの見せ場!商品価値の高め方(4ページ目)

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店を特徴付ける1000点もの器こだわりの魚料理とともに客の評判は上々

和歌山県・和歌山市 銀平 匠

カウンターから見る厨房には、およそ600点の陶器。ひとつとして同じものはなく、コース料理などのときは、客によって違う器で提供することもある

料理と器は一体。色のバランスにも気配り

「日本料理と器は一体。料理の魅力を引き出すために、器選びは欠かせません」と語る、「銀平 匠」代表の諏訪雄士氏のこだわりは、新鮮な地魚料理と、それを引き立てる数々の器。カウンターと棚には約600点もの器が並び、バックヤードの出番待ちを含めるとその数は約1000点。すべて1点ものだ。

「器が大きすぎても小さすぎても、おいしく見えません。どういう人に出すのかということや、器と料理の色のバランスも大切です。素材の色合いが映える器でないと、せっかくのおいしさが逃げてしまいます」と、料理をしている間も、どの器にどう盛り付けるかを常に意識しているという。また、ワサビやミョウガを添えることでできる色のアクセントも考慮に入れ、細部まで絶妙のバランスを追求する。

店の看板である魚料理に合う器として、諏訪氏がこだわってきたのが信楽焼だ。「土の温もりが感じられる素朴な陶器のほうが、洗練された磁器よりも魚料理に合う」と諏訪氏。イメージに合う器を探して信楽(滋賀県)を訪ねたり、地元和歌山の窯元に出向くこともたびたびある。そうやって父の代から買い集めた器が、現在の「銀平 匠」を特徴づける要素のひとつになっている。

客の評判は上々だ。「銀平 匠」の料理と器を気に入って、出張の際に必ず寄ってくれる常連の客も数多い。また、〝この器に合う料理〟とオーダーされることもある。陶器好きの客とは焼き物談義に花が咲き、座敷席からは器を愛でる会話が聞こえることもある。

「信楽焼は表面がでこぼこしていて、盛り付けるのに苦労することもよくありますが、もっとセンスよく使いこなせるようになりたいですね」と諏訪氏。料理と器の奥深さを、日々、究め続けている。

黒い信楽焼の鉢に盛り付けられたヨコワ(マグロの若魚)の刺身。ピンク色の赤身が器の黒によってより引き立つ
高さのある鉢は料理を立体的に見せてくれる効果も。煮物を入れて使うこともある
底が濃い緑色をした平皿。フグの刺身など薄造りに頻用。半透明な魚の身から、器の濃い色が透けて見える
信楽焼の高台。「キュウリとしめサバの酢みそ和え」など緑、青、黄がそろった料理に使うことが多い
和歌山・桃山の窯元の作品。あえて逆さにし、氷を貼って刺身を盛ることが多い。夏冬とも頻用している
底に短い足が3点ついた浅鉢。落ち着いた色合いのため、色数の多い「野菜の炊き合わせ」などに
銀平 匠
和歌山県和歌山市南汀丁3
http://r.gnavi.co.jp/kaac100/23年前に開業。地元・田浦漁港で水揚げされる新鮮な地魚料理が自慢のひとつだ。地域の常連客のほか、和歌山城近くの立地であることから、観光や出張で訪れる人も数多い

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