2016/06/14 特集

リーダーが変われば店も変わる! 最強チームを生む 店長の心得(5ページ目)

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CASE STUDY コミュニケーションの方法を変えたことで、店の雰囲気が一変し、チーム力も売上も上昇!

【東京・自由が丘】すず家 自由が丘店

すず家 自由が丘店 店長 有馬竜司氏
20歳から和食の修業を積み、2010年、25歳のときに「すず家 自由が丘店」のスタッフとして入職。翌年、店長に昇進して今日に至る。メニュー強化やスタッフ育成、チーム力アップなどに取り組み、店舗力の向上に成功。売上でも毎年前年比増を達成して、躍進中。

学生のアルバイトには将来を見据えた指導を実践

有馬竜司氏が「すず家 自由が丘店」の店長に就任したのは、2010年のこと。スタッフは調理担当の副店長・下田政隆氏と大学生のアルバイト数名。「日本料理店のような接客ができる、ワンランク上の居酒屋」が、有馬店長が掲げた当時の店の目標だった。

ところが、最初の2年間、スタッフは思うように動かず、売上も下がってしまう。自他ともに認める“真面目で一途”な有馬氏。目標への思いが強すぎて、スタッフに厳しく要求し過ぎ、キツイ言い方をしてしまっていた。「『店長が怖い』と言って、スタッフが萎縮し、店の雰囲気が暗くなりました。アルバイトが出勤したがらず、シフトが埋まらない日もありました」と、有馬氏は苦しかった日々を振り返る。

「これではいけない」と気づいた有馬氏は、社長からの助言も受けて、まず「言い方の選択肢を増やす」ことに取り組む。スタッフに意識的に話しかけ、彼らの性格や生活、将来の夢を知るように心がけるとともに、相手によって、言い方やアプローチの方法を変えることにしたのだ。

「例えば、ほめてから足りないところをさりげなく付け加えたり、例え話をして気づかせたり、他の人を介して伝えたりもしました」(有馬氏)。同時に、本を読んで学んだ会話術を紙に書き出すなどして、コミュニケーション力を高めるための努力も続けた。

さらに、有馬氏は、スタッフがのびのびと仕事ができる環境にするため、「店のなかで起きたことの責任は、すべて店長である自分が取る」とスタッフに宣言。「失敗を恐れず、お客様の立場に立って、自分が必要と思うサービスを積極的に実践してほしい」と呼びかけた。

同時に、アルバイト教育への考え方も変えたという。アルバイトの多くが、将来の夢を飲食業とは別の業種で描いている。有馬氏は、「僕の役割は、彼らの将来と、この店での仕事を結ぶこと」とし、「社会人として必要な礼儀、挨拶、コミュニケーション力、他人と上手に仕事をするスキルなどを、この店で身につけ、磨いてほしい」と語りかけた。そして実際の業務でもただ押し付けるのではなく、それが将来どう活きるのかを伝えたという。

変化は驚くほどはっきりと現れた。スタッフの表情が日に日に明るくなり、今まで萎縮していたスタッフが、ミスを恐れず、積極的に店に関わるようになる。業務への関心も向上して、アルバイトの先輩が後輩に店の目標や業務内容を教える姿が、自然に増えていった。「店全体が活き活きと動き出しました」と、有馬氏は当時を思い出して笑顔を見せる。すると客の反応も目に見えてよくなり、売上も上昇に転じた。

現在の店の目標について有馬氏は、「アルバイトにも調理を担当してもらえるようになること」と語る。「料理はできたほうがいいし、覚えた調理を後輩に教えることで人間性を磨くこともできる」と有馬氏。アルバイトスタッフも意欲的で、就職活動中でも、店の仕事とシフトに責任を持って動いてくれているという。

店長次第で店は変わる。有馬氏の経験はそれを如実に物語っている。

有馬店長のある一日の業務

始業前の朝礼、閉店後の終礼のほか、仕込み時間のなかで定期的に店舗ミーティングも行い、スタッフからの問題提起や情報共有に活用。忙しい営業中も積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係を築いている
本で学んだ会話のテクニックなどをメモ。「手書きすることで記憶に残ります」(有馬氏)
仕込みをしながら談笑する有馬氏と下田氏。スタッフとの何気ない会話を大切にしているという

スタッフが語る有馬店長はこんな人

副店長 下田政隆氏
同店のオープニングスタッフの1人。調理担当の副店長として、店長をサポートする

妥協せず、信念を貫く人。いたずら好きでお茶目!
「有馬さんは真面目で仕事熱心。自分が正しいと信じたら、諦めず妥協せず、とことん追求する人です。その分、周囲が見えにくくなることもありますが、その信念の強さと行動力は尊敬できるものです。店に入ったのは、私のほうが先ですが、有馬店長の性格と力を知った今では、自分の役割は彼をフォローすることだと思うようになりました。あと、いたずら好きで営業中もちょっかいを入れてきます。趣味の話で盛り上がったり、毎日楽しく仕事ができています」

有馬店長に聞く 店長の心得

Q1. 日常的に意識していることは何ですか?
冗談を言ったり、いたずらをするなど、スタッフを笑わせるようにしています。忙しいときほど場を和ませることが必要ですね。

Q2. スタッフ間で衝突などが起こったときどう対処していますか?
当事者それぞれと個別に話す機会をつくって、言い分を聞き、お互いが相手のいいところや考え方を理解できるように働きかけます。

Q3. 仕事をしていて楽しいと感じるのはどういうときですか?
1日の営業内容がトータルでうまくいったとき。特に、お客様から「満足」の言葉をいただいたり、スタッフがほめられたときはうれしいですね。

Q4. 店長をやるうえで一番必要な能力は何だと思いますか?
お客様やスタッフ、取引先など、仕事でかかわる人が、今何を思っているのかに気を配って、それに合わせたコミュニケーションがとれることです。

すず家 自由が丘店
東京都目黒区自由が丘1-3-21 ハイブリッジビルB1
http://r.gnavi.co.jp/a906602/
神奈川県川崎市内に4店舗を展開する株式会社すずやが都内に初出店。自由が丘駅から徒歩3分の場所に、2006年にオープンした。魚料理と日本酒、川崎の朝採れ野菜が売り。

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