2018/01/30 特集

働きたい店になるためにやるべきこと、やれること(3ページ目)

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Chapter 3 「人が来る、育つ、辞めない」ために大事なことは?採用活動にも新しい知恵と工夫が不可欠。成功体験と成長実感を意識した育成を!

採用コストが高騰するなか、固定観念の打破が大切

 人手不足を解消するためには、採用が前提。だが、求人媒体に数十万円のコストをかけても、現状では応募すら来ないことも珍しくない。ここでも「従来の固定観念を捨てて、新しい試みをするべき」(三ツ井氏)と言う。

 そこで提唱するのが、これからの飲食店に求められる、人材採用の3つのポイント(下表)だ。まず、飲食店の検索サイトが充実してきた今、店や企業のホームページ(以下、HP)は、集客ツールとして機能しにくくなっている。一方で求職者は、必ず店のHPをチェックする。そこで、HPを求人に特化した内容にして、働きやすさをアピールすると効果的。若い層はスマートフォンで見ることがほとんどなので、スマホ対応も必須だ。さらに、「HPなどに動画を掲載すると、より効果が上がる」(三ツ井氏)という。文章よりも動画の方が情報量も多く、感覚に訴えてアピールするのに適している。明るく元気なスタッフや現場の様子を動画サイトにもリンクしてアップした結果、「応募数が10倍に増えた店もあります」(三ツ井氏)。さらに、応募を待つだけの従来の方法だけではなく、スタッフの友人や兄弟など縁故を利用する「リファラル採用」や、これぞ!と思った人材に直接働きかける「ダイレクトリクルーティング」なども試したいところだ。「HPや動画の作成は、求人媒体に支払う費用と違って、資産にもなるのでおすすめです」と三ツ井氏は話す。

 もちろん、採用面接も決して手を抜いてはいけない。「必ずチェックシートを用意して、店側の条件を伝えるとともに、応募動機、勤務条件、経験など、必要事項をもれなく聞き出すことが必要」と、三ツ井氏。この面接シートが蓄積していくと、どんな応募者が定着しやすいのかがわかってきて、採用基準の作成にもつながるはずだ。

 ちなみに、不採用の場合でも必ず連絡して理由を伝えるなど、誠意を持って対応しよう。その後、客として来店するかもしれないし、好印象ならそれが周りに伝わり、別の友人が応募する可能性もあるからだ。

 採用したら、初日からしっかりと対応しよう。特に新人は不安感を抱くと、次の日から来なくなることもあるので、初期対応が肝心だ。また、定着のためには前ページで紹介した「スキルマップシート」を活用して、新人が目標を持ち、教育を受け、成長し、評価されて、さらに高い目標を目指す、というサイクルに巻き込むことが大切だ。「スキルマップは、それらの要素をすべてつなぐことができるツール」と三ツ井氏。ぜひ、積極的に活用してほしい。

 同時に、スタッフの育成にあたって、三ツ井氏は「成功体験と成長実感を意識してほしい」と提言する。成功体験とは、「自分にもできた!」といううれしい体験。新人の場合は、簡単な接客にチャレンジし、来店客からの「ありがとう」を引き出して、「成功体験」につなげるなどの“仕掛け”も有効だ。

 一方、「成長実感」とは、自分のスキルが上がったことを確認すること。「スキルマップ」の点数が上がる、それによって時給が上がることなども、「成長実感」につながるが、より効果的なのが「アワード(表彰)」。例えば、「1カ月間でスキルマップの点数がもっとも増え、成長したスタッフを表彰する」などのイベントを定期的に行うと、成長実感はより強固なものになる。

 三ツ井氏は、「こうした取り組みを続けることで、人が育つようになり、離職が減り、店に活力が出てきます。今後は、しっかり人材育成に取り組んでいる店や企業が生き残り、やらない店は淘汰されていくでしょう」と断言。さらに、「人が成長している店や企業は、時間をかけて、そうした企業風土を培ってきていると実感します。ぜひ多くの飲食企業で、人材育成に正面から取り組んでほしい」と呼びかけた。

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