いい牛肉と出合うには? “学び”と“信頼関係”が肝心
表面的なものは陳腐化する。一歩踏み込んだ情報収集を
さらに、千葉氏は飲食店が牛肉についての知識を深めることも勧める。「一口に牛肉といっても品質は様々。品種の違いはもちろん、血統、飼料、飼育技術や雌雄、飼育期間など、多岐にわたる要素が影響します。そうした奥深さを学べば、肉選びの精度を上げることにもつながるでしょう」(千葉氏)。
また、消費者に誤解を生じさせないためにも、メニュー表に記載したり、アピールに使用する情報の背景は、最低限知っておきたい。例えば、「A5ランク」というフレーズ。焼き肉店などでよく見られる言い方で、「A5=おいしい」といったイメージを持っている飲食店関係者も多いのではないだろうか。しかし、A5やA4などの格付けは、必ずしもおいしさを表す指標ではない。この格付けは、「枝肉取引規格」に定められる「歩留(ぶど)まり」と「肉質」という2つの指標を組み合わせたもの。歩留まりとは、牛1頭からどのくらいの量の肉が取れるかを表すもので、ABCの3段階評価。続く5段階の数字が肉質を総合評価したものだが、肉質では脂肪交雑(サシ)が最も重視され、サシが多いほど評価が高くなるよう運用されている。千葉氏は「確かに、サシが多ければ肉がやわらかくなります。一方で、おいしさにはやわらかさのほかにも、脂肪の質や香りなどさまざまな要素が影響します。規格のみでおいしさを判断することはできません」と話す。
特に販促面では格付けや品種のようなわかりやすいものに頼りがちだが、「表面的で、誰にでもまねできるものは陳腐化しやすい。他にない価値を作るには、一歩踏み込んで学んでみてほしい」と千葉氏は言う。
枝肉を見る目も重要。業者との信頼関係を大切に
千葉氏自身は、自社で扱う牛肉を「枝肉を見て選んでいる」と言う。枝肉とは、牛をと畜し、頭部と内臓を外した状態。「枝肉を見れば、その牛の品種や雌雄、育ち方、熟成に向くかどうかなどをイメージできます。そこに、生産サイドの情報を加味して、1頭丸ごと仕入れています」(千葉氏)。
多くの卸売業者も同じように、枝肉を見て肉質を判断し、スーパーなど小売向けか、飲食店向けか、飲食店のメニューの中でも鍋に使うのか、ステーキに使うのかなども踏まえて、顧客に合わせて買い付けている。飲食店も、知識とともにこうした枝肉を見る目を養うことが理想的ではあるが、一朝一夕には難しい。そこで、卸売業者や精肉店との信頼関係が重要になる。「まずは、卸売業者に、自店で何を出したいか、どんな肉が欲しいのかを伝え、しっかりコミュニケーションを取ることが大切」(千葉氏)。また、価格の安さだけで業者を天秤にかけることのリスクも指摘する。「良い肉を届けてもらうためには、コロコロと取引先を変えず、腰を据えて長い期間、付き合っていくことも大事です」と千葉氏は話す。